これは、会社の同僚から聞いた話です。
彼が小学校6年生の頃、「山﨑玲子さん」という遊びが流行りました。
いわゆるコックリさんの亜種で、ルールもほぼ同じ。
ですが、決定的な違いがいくつかあったそうです。
紙に五十音と「はい・いいえ」を書き、鳥居の代わりに家の絵を描く。
学校以外では絶対にやってはいけない。
遊びを終了する時は必ず「玲子さん、ありがとうございました。どうぞお家にお帰りください」と言わなければならない。
そして、最大の違いは、玲子さんがどんな人だったのかを知っていなければならないこと。
玲子さんは、昔この学校で亡くなった女生徒です。
放課後の図書室で心臓発作を起こし、そのまま亡くなってしまいました。
けれど、自分が死んだことに気づいていません。
今でも学校に通い、誰にも気づかれぬまま家に帰る、そんな日々を繰り返しているのです。
誰にも相手にされず寂しい思いをしている彼女は、話し相手が出来る事を喜び、学校のことを何でも教えてくれます。
彼女は時折、「友達になろう」と誘ってきますが、絶対に「はい」と答えてはいけません。
この遊びを学校の外でやってはいけない理由もそこにあります。
学校外で玲子さんを呼び出してしまうと友達だと思われてしまい、ついてきてしまうから。
「半年ぐらい流行ったんだよ、これ。でも遊んでる時にパニック起こしたグループが出てさ、先生達から禁止された」
彼はこの話を、小学校の同窓会に参加した時に思い出したそうです。
「当時流行ったよなって玲子さんの話題が出てさ、懐かしいなぁとか話してたんだ。そしたら同じクラスだった奴らが、こう言ったんだよ。
『あれ、実は俺達で適当に作った遊びなんだよ』
『小説で見た人工幽霊実験の再現ができるか、試してみたくて真似したんだ』って」
とても真剣な表情で、彼は話を続けました。
「当時、知らない女子生徒を見たって奴がいた、『友達になろうよ』って声を聞いたって奴もいた、放課後に家のチャイムに出ようとしたら、磨りガラス越しに知らない子が立ってる姿を見たって奴もいた」
「作り話だったとしても、玲子さんは確かにいたんだ。見たとか聞いたとかの話には嘘も混ざってたのかもしれない、でも本気で信じてる奴は多かったし、本気で怖がってる奴も多かった」
「なぁ、ネットには嘘か本当かわからない怪談話が山ほどあるよな。もし、思い込みで幽霊を生み出せるとしたら、この世界には多分”実体を得た幽霊”ってのも一定数存在するんじゃないかと思うんだ」
「俺があの時見たアレは、絶対に夢なんかじゃなかった」
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