「どうして、どうしてこんなことになったんだ。どうして」
「ねえ葉介君、聞いて?」
「……ごめん、今日は君と一緒にいる事はできない」
「……わかった。また連絡するね」
「こんな夢、終わらせないと……。こんな夢があるから俺は……」
僕は朦朧とした意識の中で、はっきりとした意志を持ってハンドルを握る。
俺の視線の先には、歩く女の姿が映っていた。
美咲さん、駄目だ。逃げて!
雪乃、もう終わらせよう。こんな夢にすがっていてはいけない。
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「おはよう、雪乃」
目が覚めると、俺はまたいつものように雪乃の病室にいた。
「ひどい夢を見ていたよ。本当に、ひどい」
言いながら、少し笑いがこぼれた。悪趣味な夢だったが、今となっては喜劇にすら思える。
「でももう大丈夫だ。全部終わらせたから」
そうだ。もう全ては終わった。あの時、夢は終わって、現実が始まったんだ。俺と雪乃の現実が。
「これからは、ずっと君の側にいるよ」
俺は指先を雪乃の髪にそっと這わせる。雪乃は俺だけのものになった。愛しみがあふれてくる。
もうあの夢を見ることはない。
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