私は、驚きの余り、そこに立ちすくんでしまいました。
家中の雨戸が、家全体を覆い隠すがごとく固く厳重に閉じられていたからです。
夜間でもなければ、悪天候でもないのに、どうして?
せっかく招いてくれたのに、私が約束の3時に少し遅れたことで、Y子ちゃんは、お仕置きでもされているのではないだろうか。
私が遅刻したことで、なにか良からぬことが起こっているのではないだろうか。
と。
私は、逸る気持ちを抑えつつ、縁側に靴のままあがり、雨戸の隙間から中を覗いて見ようと試みました。
音がしないように、主足(ぬきあし)差足(さしあし)、雨戸に平行に向き合う格好で、縁側を伝い歩きしているうちに、私の目と同じ高さに、小さな節穴を見つけました。
それは、雨戸の板についている渦巻き状の木の節(ふし)でした。
雨戸の節穴からは、
トン トトン トン トン トン
かすかに、太鼓を叩く音が聞こえてきます。
節に顔をくっつけ、音のする方へ耳を傾けると、目の前にある板の節が、ひとりでにボロボロと崩れ落ちてくるではありませんか。
10円玉大の大きさだった穴は、またたくまに、手のひら大に広がり、大広間と思しき広い畳の部屋が見えてきました。
大広間には、Y子ちゃん、A子さん、T子さん、お父様・お母様・お祖父様・お祖母様、他、ご親族なのか定かではありませんが、このお祝いイベントの関係者と思われる十数名の男女が、何かを囲むように神妙な面持ちで座っていました。
トン トトン トン トン トン
太鼓の音がする方へ、視線を移し、絶句しました。
数名の演者が叩く、太鼓の音色に合わせ、美しい布をたくさん身にまとった二体の人形が、盲目の老婆の謳う歌に乗って、ゆらゆらと空中を舞っているではありませんか。
うわ~、す、すごい。
思わず、声を挙げそうになり、慌てて口を塞ぎました。
う~う~るるっぅ~
一小節ごとに 曲調が変化し 緩やかで穏やかな川の流れのような調べが響き渡り、雛人形ほどの大きさの二体の人形が互い違いにすれ違い、交差しつつ、高い天井スレスレまで上がったかと思うと、畳を擦るほど低く下り、また、上り下るといった動きを繰り返しています。
その度に、何層にも重ねられた色とりどりの布が、人形の動きに合わせ、蝶の羽のようにひらひらと舞い上がるのです。
くるくると回りながら、下へ上へと伸びやかに軽やかに宙を漂い続ける姿は、たいそう美しく、また楽しそうに見えました。
生まれて始めてみる人形の舞。
漫画、映画、人形劇、バレェや日本舞踊とも異なる 自らの意志で動く芸術作品。
私は、我を忘れ、思わず身を乗り出し、二体の人形の動きに魅入られてしまいました。






















怖い
すみません。作者から一言お詫びを申し上げます。一度、アップしましたが、読み直してみると誤字脱字、表現の誤りが多く、一部もしくは数か所訂正させていただきました。再アップいたします。
ご笑覧いただけましたら幸に存じます。
貴重な体験でしたね。
怖いというよりちょっと感動した。
すみません
一時間後の後が語になってましたよ
あと面白かったです
*作者より
長編、しかもかなりひと世代前のお話。月の後半に投稿したにも関わらず、こんなに多くの方に読んでいただけるなんて恐悦至極にございます。
何度か手直しさせていただきましたこと、ところどころわかりにくかった箇所や読みにくい箇所など申し訳ございませんでした。今後、精進してまいりますので、お許しいただきたく存じます。
先月後半は、皆様のコメントに支えられ、励まされ、また筆を執ってみようかなと思いも新たにすることが出来ました。
心より感謝申し上げます。
お読みいただいた皆様ありがとうございました。
あまり閲覧されないようでしたら、筆を折る覚悟でいました。
でも、心機一転。新たな気持で新たなペンネームでこれからも書き続けたいと思います。
遅筆ではございますが、投稿した暁には、ご笑覧いただけましたら幸いに存じます。
<一時間後の後が語になってましたよ
大変申し訳ございませんでした。ご指摘ありがとうございます。
早急に訂正いたします。はて?どのあたりだったでしょうか・・・。^^; 今から、探します。
誤字脱字、入力ミスに変換ミスは、何年経っても治りませんね。これは、年齢と言うよりは、性格的なものかもしれません。これからは、極力そのようなことのないように慎重に投稿いたします。
また、間違いがありましたら、いつでもご指摘くださいませ。
<あと面白かったです
嬉しいお言葉感謝いたします。
これからも、精進してまいりますので、よろしくお願いいたします。
ご指摘いただきました箇所、1時間語→1時間後に 訂正いたしました。
ありがとうございました。