「前に住んでたっていう人が『僕は廣中だ』ってずっと語り掛けてくるんですよ」
その日から、僕は自分の名前を名乗るのが怖くなった。
誰かに「お名前は?」と聞かれるたび、喉の奥から「廣中です」という言葉が、なぜか浮かんでくる。
自分の意志とは関係なく、なぜか自分の名前よりも先に、廣中という言葉が出てくる。
昨日、初めて深夜にゴミを捨てに行った。帰り道、鏡のようにピカピカに磨かれた郵便受けに映った自分の顔を見て、足が止まった。
それは確かに僕の顔だった。同じ顔、同じ体格、同じスーツ…
でも足だけはピクピクと揺れ動いている。
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いやクビになったのに、いつまでスーツ着てるんだよ