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ヒトコワ

はどはどさんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

「もうすぐ」
短編 2025/03/13 12:05 2,317view

僕は混乱した。確かに彼は廣中だ。同じ顔、同じ体格、同じスーツ。何かおかしい。

「でも…」

「失礼します」

彼はマンションの中に入っていった。

次の日、好奇心に負けた僕は、マンションの管理人に聞いてみた。

「301の廣中さん?ああ、先週引っ越しましたけど。何かありました?」

「えっ…でも、昨日も見かけましたよ?」

管理人はまさに「何言ってんだこの人」という顔をした。

「もう鍵も返却済みだし、部屋は空室ですよ?」

その夜、僕は再び彼を待った。そして予想通り、いつもの時間に彼は現れた。ゴミ袋を持って。
僕は彼を追いかけた。ゴミ置き場まで。
彼がネットをめくろうとしたとき、僕は声をかけた。

「ちょっと、あの!…あなた、誰ですか?」

彼はゆっくりと振り向いた。その顔は、確かに廣中だった。だが、表情がどこか違う。

「廣中です」と彼は言った。声も同じ。

「でも、管理人さんは引っ越したって…」

「はい。引っ越しましたよ。でも、ゴミ出しを忘れていたので」

彼の説明は筋が通っているようで、どこか不自然で、意味不明だと思った。だが、それ以上追求する勇気がなかった。

彼は会釈して、ゴミを捨て、僕の横を通り過ぎていった。すれ違いざま、彼の足がピクピク揺れているのに気づいた。

帰り際、彼が振り返り、小さな声でつぶやいた。

「大丈夫ですよ。もうすぐ、ですから」

―― それから数日後、301号室に若い男性が引っ越してきた。

偶然、エレベーターで一緒になった時、彼は
「この部屋、前の住人は何か変わった人でしたか?」と尋ねてきた。

「いいえ、ごく普通の人でしたよ」

「そうですか。変な夢を見たもので」

「へぇ…どんな夢です?」

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コメント(1)
  • いやクビになったのに、いつまでスーツ着てるんだよ

    2025/03/14/08:52

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