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心霊

きのこさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

血雪
長編 2025/01/09 12:05 819view

母ちゃんは、「気味がわるいねえ」とか言いながら味噌汁つくっていたが、
ふと、台所の窓から外を見ながら、「あれ、その女の人じゃないかね」とおれを呼んだ。
おれは台所の窓に飛んでいったが、窓からみえるのは降りしきる雪ばかりだった。

「私の見まちがいかねえ」とボヤく母ちゃんを尻目に、おれは再び炬燵に戻ろうとしたが、
そのとき、炬燵が置いてある古い六畳間の窓の外から、
ガラスに顔をちかづけて、こっちを見ている女と視線がばったり会ってしまった。

女は細面の青白い顔で髪が長く、そして口のまわりと首のまわりにベッタリ血がついていた。
おれは体が凍りつき、頭のなかが一瞬まっ白になったが、気がついたときには女の顔は消えていた。
あわてて窓をあけて表を見たが、女の姿も、足跡もなかった。

おれは迷った挙句、駐在所に電話をいれる事にした。

親子そろって頭がおかしくなったんじゃないか、と言われそうでためらったのだけど、
おれが見たのが幻や幽霊であったとしても、見たことは事実なのだ。

受話器のむこうで何度か呼出し音がしたあと、聞きなれた声の警官が出た。
おれが自分の名を告げると、警官は開口一番、
『なんだ、また出たってのか?』と言ったので、おれは気おくれして、
親父はまだそこにいるんですか、とだけ聞いた。
親父は『もう30分くらい前に駐在所を出た』との事だった。

おれは母ちゃんと親父の帰りを待った。30分前に出てるなら、もう着いていてもいいころだ。
だけど親父はなかなか帰ってこなかった。
おれは母ちゃんと二人で、冷めた朝飯を食いながら、

「親父はまっすぐビニールハウスを見にいったんだろう」と話した。

だけど、昼過ぎになっても戻ってこないので、おれはビニールハウスに親父をさがしに行った。

例の橋まできたとき、やや新い足跡がひとり分、橋のうえに続いているのが見えた。
その足跡を目で追うと、それは橋の途中の、
例の女がうずくまっていたと言うあたりまで続き、そこで消えていた。

その欄干の上の雪は、半分ほど欠けていた。
おれは欄干に近寄り、そこから川面を見下ろした。
まっ白な雪の土手にはさまれた川の、膝くらいまでしかない流水のなかに、
黒いジャンパー姿の、長靴をはいた男がうつぶせに倒れていた。
おれは土手を走り降り、川に入っていった。
うつぶせに倒れている男は、親父だった。

3/4
コメント(1)
  • 投稿者のきのこです
    冬休みの間投稿出来なかったので
    今日はたくさん投稿して取り戻します!!

    2025/01/09/12:08

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