無人の世界
投稿者:きのこ (21)
短編
2025/01/09
11:38
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私はふと顔を上げました。
目の前には壁に設置された姿見がありました。
しかしよくよく見ると、鏡に映っていなければならない私の姿がなかったのです。
そこで意識を失いました。
目覚めたとき、私はステーション内のソファの上にいました。
周りはいつもの活気ある職場です。
私が最初に連絡し、自宅に電話をくれた同僚が言うには通用口近くで私は倒れていたらしいのです。
不思議なのはそれを彼女に教えてくれた方がいたのですが、どうしても思い出せないと言います。
実際彼女はその人を見たのに、どんな顔だったのか、どれくらいの身長だったのか、
性別さえも「思い出せない」のです。
その同僚に私も色々質問されましたが、
私の身に起きたことを裏付ける確たる証拠が挙げられませんでした。
投げ捨てた携帯電話や更衣室のロッカーに入れた所持品がなにもかもなくなっているからです。
それに私の見た大きな鏡さえ元々ないのですから。
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