その子
投稿者:マチノスケ (16)
長編
2025/01/02
21:17
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もう一度、生まれようとするかもしれませんねぇ。無理矢理にでも。たとえ、自分たちを滅ぼした人間の身体を使ってでも。どれだけ、ぐちゃぐちゃになってでも。
*
私は何も言えずに、ただ呆然とその話を聞いていました。そして聞き終わってから、かろうじて出た言葉は「それは……さすがに言うた方がいいんじゃないですか」でした。ただ、おじいさんは静かに首を横に振って
「こんな話、今時の人が信じるわけないでしょ。ジジイの戯言だとしか思われませんて。それに、村の人らは何も言わないことに決めたみたいですし。僕はもう、知りません」
さすがに不気味すぎて気分が悪くなってきた私は、ちょうど話も途切れたことやし急いで帰ろうとしました。
けどその時おじいさん、私の腕をガッと掴みました。
そして最初、私に声をかけた時のような笑顔で
ぞっとするほどの無邪気な笑顔で、最後にこう言いました。
「僕だってね、言うてやりたいですよ。あの像に拝んで、『子供を授かりました』って喜んでる人ら全員に」
「今お腹の中にいるその子、ホンマに人間なんですか?って」
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