もみじ山
投稿者:マチノスケ (16)
私自身が、体験していなければ。
大学に入ってからできた友人に、オカルト好きな人がいたんです。彼も勿論もみじ山の噂を知っていました。初秋のある日、その話題になった時「この秋に紅葉の観光がてら調査するから一緒に行かないか」と言ってきたんです。噂が本当か確かめると言うよりは、その噂が発生した謂れ等がないかを文献や聞き取りで調べるんだとか。私に案内役でも頼みたかったのでしょうか。私は当然信じてませんでしたし、地元民が知らない独り歩きしている噂の時点で、大した情報も得られないと思いました。何より自分の出身を馬鹿にされたようで気分を害し、到底行く気になれず一人で行けと突っぱねてしまいました。逆に彼は気を悪くすることなく「悪かった、俺だけで行ってくるよ」と苦笑いしていました。
そして彼は、もみじ山に行きました。彼とは連絡を取っていましたが、当日の時点で特におかしな事はありませんでした。ただ、その日の夜遅くに彼から電話がかかってきたんです。何か満足する情報があったのか、何もなかったから普通に紅葉の感想を言いにかけたのか。普段電話なんてしないから少し変だと思いつつも、とりあえず楽しめたのかなと思って電話に出ました。そうしたら
なんか、笑い声が聞こえてきたんです。彼の。
笑いながら、ブツブツ何か言ってるんです。
「……じ…ま ひひっ ……じさま」
彼はオカルト好きですが、根は真面目でしたから冗談でもこんなタチの悪いイタズラをする人じゃないんです。心のどこかで不安だった私は本当に怖くなって、何も言えなくなって。それで黙っていると、彼がなんて言っているのか分かったんです。
「もみじさま」
彼はそう言っていました。
笑いながら、何度も何度も。
私はもう耐えられなくなって「ちょ、ちょっといい加減にしてよ!」と叫んでしまいました。すると突然、彼の声がピタッと止んだんです。
数秒の沈黙のあと、ただ一言
「とけたい」
ぞっとするほど抑揚のない声を残して、電話が切れました。
夜中に金華山に登ると良いことがある。ただ調べていくと、何もいい事は無い。調べずに無心で行くということがある