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妖怪・風習・伝奇

マチノスケさんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

飛蚊症
短編 2025/01/02 10:41 727view

 私がおかしくなって、彼が言っていたようにイモムシに呪われて幻覚を見たのだと。でも、こうやって「目がくり抜かれた男性の変死体」について事情聴取を受けていると言うことは事実なのでしょうね。それに、そのすぐ近くで未知の成分でできた分泌液の類も発見されたんですよね。いっそ悪夢だった方が……狂っていたのが私だった方が、よっぽどマシでした。

 あの話をしたあと、彼は大きなくしゃみをしたんです。

 そしたら……

 ──びちゃっ。

 なにかが飛び散って、滴れました。

 最初は飛沫か鼻水かと思ったんですが、明らかに量が多い。それに変な色をしていました。何より彼が……くしゃみの瞬間に顔を下にしたまま、ぴくりとも動かないんです。床に溜まったその液体のもとをたどると、彼の目でした。血と一緒に、なにかが滴れ続けていました。もう……気持ち悪くて気を失いそうでしたが、医者として確かめないわけにはいきません。私は彼の顔を、ゆっくりと起こしました。

 そこで見たもののことは、思い出すだけで吐きそうになります。グロいとか酷いとか、そんな一言では到底表現しきれません。眼前の光景があまりにも異常すぎて、脳の理解が追いつかず、目を背けることもできず。そして、やっと「自分がいま何を見ているか」が分かった瞬間に凄まじい恐怖と嫌悪感が侵食してきて。気がついた時には訳のわからない悲鳴をあげながら、彼の死体を突き飛ばしていました。

 まさに地獄でした。

 裂けて血塗れになった、目の周りの皮膚。

 破けてしわしわになった結膜や角膜。

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