私は、それを見てぞっとしました。
人の手だとは思えませんでした。
私が学校で見た時「少し赤いかな」くらいだったその指は、酷い火傷を負った時のような痛々しい赤色になっており、異様に腫れ上がっていました。そして指の付け根あたりから手首、そこから肘にかけての部分は、血が通わなくなって壊死したかのような緑っぽい色に変色していたのです。もともと細かったサキちゃんの腕が、そこだけ更に肉がげっそりと落ちて細くなり、人の肌とは思えぬ質感になり……まるで、何かの植物のような姿になっていました。
そこで私は、気づいたんです。
あれは蕾でした。
彼岸花の蕾でした。
彼岸花は一本の茎に複数の花茎が生え、そこに細長く赤い蕾ができます。その姿は、少し指を広げた人の手に似ています。そして、その蕾は先端から裂けて、べろりと捲れあがるような形で花開きます。あの写真に映っていたサキちゃんの左手は、まさに彼岸花の蕾そのものでした。私はソレを見た瞬間、あの日見たものが走馬灯のように頭の中を駆け巡りました。
林の中。
木々の間から差し込む夕日。
緑の匂いとヒグラシの声。
妙に開けた場所。
その真ん中に立っていたお墓。
苔むした竿石と台。
供えたばかりのような瑞々しい彼岸花。
焼けた鉄のような赫い彼岸花。
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二人の感性か、時間帯か。あるいは墓石に潜む存在に魅入られたか。本来見つけることのできない、墓石へと続く道が現れてしまった、とでもいうのだろうか。
むかしは逢魔が時と呼ばれたものだ。昼から夜へと移りゆく、なにげない夕刻のひとときに、このように悲運へと引き摺り込まんとする魔の手が蠢いているのかもしれない。
面白い、日本語を中国語に翻訳しました。大学卒業論文として。