ゆきめ
投稿者:マチノスケ (16)
オーソドックスな人型の幽霊から、得体の知れない妖怪のようなものまで。
ゆき“め”というからには目玉に関係するものなのかもしれない。
頭の中であらゆる姿をした存在しない怪異たちが、時にははっきりと時には不完全なまま浮かび上がっては溶けて消えていく。それがなんだか楽しくて、ひと段落した頃にはかなり時間が経っていました。飲み終わったコーヒーのカップを返すついでにご主人に答えを聞こうと思いましたが、なんだか忙しそうにされていたので止めました。そして、そのまま自分の部屋のベッドに入ったんです。それからも先程までしていた想像がやめられず中々寝付けなかったのですが、予定外の移動で疲れていたのもあって、いつのまにか眠っていました。
目が覚めた時には、すっかり空が明るくなっていました。なにか変な夢を見ていたような気がしましたが、いくら思い出そうとしても記憶が朧げでした。時計を見ると民宿を出るまで時間がまだあったので、ベッドから上半身だけを起こして部屋の窓から見える景色を、またぼんやりと眺めて時間を潰すことにしたんです。昨日の夜に相当降ったのか、外にあるものは雪をすっぽりと被っており、それらが朝日に照らされて目が痛くなるほどの白さと眩しさでギラギラと反射していました。私は特に何かを見るわけでもなく、窓からすぐ下に見える雪を纏って真っ白になった玄関の庇に、無意味に視線を向けていました。
しばらく眺めたあと、そろそろ荷物をまとめようかと視線を切ろうとした時です。
ただ、雪が積もってできただけのものが。
なんでもないはずの、雪の塊が。
もぞもぞと、蠢いたように見えたんです。
私はすぐに視線を戻しました。
見間違いだと思って。
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