冷や汗がドッと湧き出る。
どっどっどっどっっ。
急な心拍の加速に心臓が痛い。
あの席は。
あの席は。
あの席は、俺がいつも座る例の空いている席。
俺以外にあそこに座る人を見た事がない。
だからいつも俺が座れる席。
そのいつも空いている席に今は女の人が座っている。
黒いロングヘアにどこかの高校の制服。
俺たちの会話を聞いているのかは分からないが、ただただ前を向いて鎮座している。
運転手は何故か、彼女を認識していない。
『そのトリガーを引いたなら……あなたは死ぬでしょうね』
昼間の鎖のセリフが脳内に木霊する。
引いたのか。
俺は。
目を離したい、何事もないようにこのままバスを降りて、また上りのバスに乗って家へ帰ればいい。
それだけで不安は解消される。
そう思いたい。
ただ1点を見つめて愕然としている俺を心配してか運転手が「きみ大丈夫かい?」と投げかけてくる。
そんな運転手の制服の奥で、彼女は、彼女は。
振り返ろうとしていた。
後頭部しか見えなかった頭がゆっくりと回転し始める。
体の向きは微動だにしない。
頭だけが、ゆっくりと回転している。
やめろ、やめてくれ。
この話は怖かったですか?
怖いに投票する 22票
























えっ、最後びっくりした
「床に落ちた何か」てなんだったの?