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電子藻屑さんによるにまつわる怖い話の投稿です

いつも空いている席の正体
長編 2024/12/26 22:41 15,088view
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いつも空いている席がある。

それに気づいたのは高校1年生の6月頃だった。

進学後のクラスにもいい感じに馴染み始め、学校に通うのが楽しくなり始めた頃の話。

俺は県内の偏差値50くらいの無難な公立高校に進学した。

この高校がよかったとか特にそういう理由はなく、学力的にもまずここなら落ちないだろうという安牌を切るが如く選んだ高校。

狙い通り受かったし、部活も豊富だし、校舎も綺麗だ。

友人にも恵まれて今のところ彼女が出来ない事以外は順風満帆といえる。

しかし、この学校生活に1つ不満を言うとするなら、それは通学に片道1時間はかかるという事だった。

家からバス停へ行き、バスに15分ほど揺られ駅へ着く、そこから電車で30分ほど揺られ駅から5分ほど歩いてやっと高校へ到着する。

電車を待つ時間とか、もろもろ含めて1時間。

そうなると必然的に朝起きる時間も早くなるわけで。
まぁ何が言いたいかというと、とにかく眠いのだ。

ただでさえゲーム好きの俺からすると連日徹夜なんて当たり前で、毎朝起きてるのか寝てるのか分からない頭で登校してた。

だからこそバスでも電車でも、俺みたいな寝不足野郎にとって座れる席というのはオアシスに等しい。

乗車すると血眼になって座れる席を探すなんて日常茶飯事だった。

だから気づいた。

近所にあるバス停、そこから毎朝決まった時間にバスに乗るのだが。

なぜか車内右側、前から3番目の席だけがいつも空いている。

俺が通学する時間はまさに通勤ラッシュと被るため地元のサラリーマンやらOLやら、まさにこれから行きたくもない会社へ向かっておりますと言いたげな顔をした連中でバスの中はシーンと賑わっている。

しかし、その席だけがポッカリと空いているのだ。

最初こそ公共交通機関を使った通学に慣れてなかったからかあまり深く考えず、ラッキーくらいの気持ちでその座席に座って毎朝通学していた、しかしココ最近になって通学に慣れてきたためか、俺が毎日座ることのできるその座席の、その異常性に気がついてしまった。

座りたいけど座れないスーツを着たおじさんが不機嫌そうな顔を貼り付けながらその座席の横で手すりに掴まって立っている。

そこに座ればいいのに皆が皆、その席だけを避けているようだった。

別に背もたれが壊れているとか、変な臭いがするとか、酷く汚れているとか、そういった外的要因は見受けられない。

それでも当時の俺は霊的な事とか、スピリチュアル的な事はもっぱら信じていなかったので、すこし変だなと思いつつも睡魔に流されてその日もいつものようにバス停へ並んだ。

いつも3分から5分程度、定刻より遅れてくるそのバスを標識板に背を預けながら待っていた。

涼しい朝の風で顔を洗っていると後ろの方からコツコツとローファーの足音が聞こえてきた。

硬い靴がコンクリートを弾く音に紛れて隠し味のように金属がジャラジャラと擦れる音が聞こえる。

あー、あいつだ。

その子は俺と同じ制服のスカートを揺らしながら3mくらいわざとらしく俺から距離を取って後ろに並んだ。

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コメント(2)
  • えっ、最後びっくりした

    2024/12/27/21:48
  • 「床に落ちた何か」てなんだったの?

    2025/02/19/21:21

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