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不思議体験

たちさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

招かざる客
短編 2024/12/04 00:27 606view

私は10年以上前に、とある事情で仮設住宅に家族と共に入居した。
私、妹のユキ、お母さん。祖父と祖母も近くの仮設住宅に入居していた。

ある日の夕方、母が出かける用事で不在になり、当時中学生の私と小学6年生の妹が留守番をしていた。テレビを見たり、スマホをいじったりして各々過ごしていた。
しばらくして、テレビを見てると
「バタン」とドアが閉まる音がした。
母が帰ってきたと思い、
「おかえりー」と声をかけたが返事がない。
いつもは「ただいま」と返事をしてくるので不審に思いながら入り口の方を覗き込んだ。
しかし、母は帰ってきていなかった。
「あれ?気のせいか。それか、別の家の人かな?」と思いテレビを引き続き見ることにした。
それから10分程して、
「バタン」と、また音がした。
再度、「おかえりー」と声をかけるが返事がない。
「またー?どこの人かな?ドア閉めるの強すぎるんだよ。」と少しだけイラッとした。

その後、隣の部屋に本を取りに行った時部屋の電気が突然切れた。
「停電かな。」と思い、スマホのライトを点けた瞬間、金縛りのように動けなくなり声も出せなくなった。

私は困惑しながらも、周りの状況を確認した。
部屋の電気は切れてる、テレビも付いてない、隣の部屋には妹がいるはず、と考えていると私の視線はある一点から離せなくなっていた。

テレビのある部屋との間にある襖がスーっとゆっくり開いた。
私は恐怖と驚きで震えが止まらなかった。
人が1人通れるくらい開くとそこには全身ずぶ濡れの男性が立っていた。
男性は顔を下げ、少し猫背のような体勢で立っている。水が床にピタっ、ピタっと滴る音だけが聞こえていた。
声が出せないが隣にいる妹を呼ぼうと、
「ゆ……ゆ……ゆ……」と、とても隣の部屋に聞こえないようなカスれた声を必死に出していた。

ずぶ濡れの男性の顔は見えず、ゆっくりこちらの部屋に入ろうとしていた。
一歩、部屋に入った瞬間、
「スー、バタン!」と隣の部屋の襖が開いた。
「お姉ちゃん!」と妹が入ってきた瞬間に体は動くようになり、声も出せるようになった。

「ユキ!」と抱き合い、男性の方を見ると襖は閉まっていて部屋の電気も点いていた。

妹は、私がいる部屋での異変に気付いたようで、
「お姉ちゃん。お姉ちゃん。」と呼びかけていたが返事がないので部屋に入ってきてくれたそうだ。
徐々に落ち着きを取り戻した私は妹と2人で母の帰宅を待つことにした。
まもなくして、「バタン」と入り口が閉まる音がして一瞬、ビクッとしたが「ただいまー」という母の声が聞こえてきて安心した。
「おかえりー」と母を迎え、テレビのある部屋に行こうとしたら襖が開き、母の方を見ると、母のすぐ後ろにずぶ濡れの男性が立っていた。
先程の時とは違い、体は動くが恐怖のあまり震えて動けない。
「う、うしろ…うし…ろ…」
と震えながら母に伝え、母が後ろを振り向いた瞬間に男性の姿は消えた。
「なにー?どうしたの?大丈夫?」と心配した母が近づいてきた。
震える私を抱きしめ、落ち着かせようとしてくれていた。
しばらくして落ち着いた私に、
「そういえば、ユキは?」と母が言った。
私は、
「何を言っているの?隣にいるでしょ」と思いながら隣を見たが妹がいない。

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