獄中死したとある老人の話
投稿者:ねこじろう (149)
短編
2024/12/01
09:24
1,916view
それから一瞬の間があったその後だった。
いきなり何かが彼の足首をガシリと掴んだ。
え?
驚いた彼は思わず足元の暗がりに視線をやる。
そして一気に全身が総毛立つと、おかしな悲鳴をあげた。
あわわわわ!
そこには、
白髪を七三に分けたSさんの無表情な青い顔と筋張った細い腕だけがあった。
奥谷は必死に上半身を前後に動かしながら「止めろ!離せ!」と叫びだす。
「先輩、どうしたんですか?」
驚いた脇田が慌てて声をかけた途端、
車はエンジン音を唸らせながら急発進した。
※※※※※※※※※※
以下は翌日朝刊社会面の記事。
令和6年○月○日午後5時10分頃、東京都S区M町交差点において赤信号で停車していたパトカーが突然暴走して歩行者を次々跳ね飛ばし、前方を走るバス後方に衝突した。
この事故で3名の歩行者が重軽傷、2名が死亡した。
パトカーを運転していた都内警察署勤務の刑事と同乗していた刑事2名のうち助手席に座っていた脇田雄介(24)さんはフロントガラスに頭部を強打し、脳挫傷で死亡。
警察は軽症だった運転席の奥谷淳治(43)さんに事情を聴取しているが、足元にいた老人から足首を掴まれて無理やりアクセルを踏まされたと、意味不明なことを訴えている。
【了】
この話は怖かったですか?
怖いに投票する 20票
やっぱ、ねこじろうさんは神っすね
その悲惨な事件の無限ループですか
コメントありがとうございます
━ねこじろう
七人ミサキみたいな感じで、誰か違う人を引きずり込む事で成仏できるとか