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栗饅頭の開きさんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

ばあちゃんのお守り
短編 2024/09/25 14:35 631view
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私は幼いころに両親が離婚し親権を母親が獲得したため、5歳から14歳の9年間を母方の実家で過ごしました。そこで祖母がよく私に「いいかい○○。お前は良くないものを引き寄せちゃうみたいだから気を付けないといかんよ。」と言い聞かせてくれていました。最初はちゃんと聞いていたのですが年齢を重ねるごとに面倒臭くなり適当に流していたのですが、とある事情で引っ越すことになった際に祖母が「○○はあの子たちに好かれやすいみたいだからねぇ、これを持っていきなさい。」とガラス玉のついたお守りのようなものを渡してきました。私がそれについて尋ねると「肌身離さず持っていなさい。もしその玉に何か異変が起きたら、絶対に声を出してはいけないよ。いいね?」と言われたので訳が分からないままに首を縦に振りました。
それからしばらく時間が経って大学4年の6月ごろ、卒業研究が嫌になった私は同じゼミの友人4人で大学近くの森に肝試しに行っていました。そこの森ではいじめを受けた高校生が自殺しただの夜中に入ると入った時より人数が減っているだの出所不明の噂が多々あり、日頃の鬱憤や不平不満を垂れ流しながら森の中を進んでいきました。
その日は6月、しかも前日に雨が降ったというのもあって暑い上にジメジメしていて風もなかったのですが、突然ふとももに冷たい何かが触れました。何だろうと思いポケットを漁ると、スマホにつけていたお守りのガラス玉が白く濁っていて、しかも滅茶苦茶に冷たくなっていました。
それを見ると同時にそれをもらった時に祖母から言われたことを思い出しました。(しゃべったらだめだ!)と思って反射的に口を塞ぐと同時に、前を歩いていた友人(A)がぴたりと足を止めました。そしてこちらをゆっくりと振り向いたかと思うと「あおぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」と叫びだしました。周りにいた友人(BとC)はAがイタズラでやっているのかと思い「おまえそういうの面白くないぞ」や「うるさいからやめろ」と各々制止したのですが、それでもAは叫ぶことを止めず次第に彼を制止しようとした友人たちも「あおぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」と酒に出してしまい、私と残った友人(D)は怖くなって走って逃げました。その日はそのまま一人暮らしをしているDの家に泊めてもらい、次の日の始発で家に帰ると朝早い時間だというのに祖母に電話しました。
電話に出た祖母は久しぶりに私の声を聞いて嬉しそうでしたが昨晩の話をすると声色が変わり、今すぐ祖父母宅にくるように言って電話を切りました。私が言われた通りに祖父母宅に行くと門の前で待機していた祖母に強めのビンタを喰らい「○○、あんた一体何したんだい!この大バカ者!」と怒鳴りながら私を家に押し込みました。そしてその場で昨日私たちが遭遇した現象について話してくれました。
「○○たちが入った森にはヤガキ(よく聞き取れなかった。)が住んでいたのだろう。ヤガキというのは毛むくじゃらの眼が無いシカのような姿をしていて、人の中に入り込んで魂を持っていく良くないモノだ。おそらく○○も含めて全員森に入った時から狙われていたのだろうねぇ。」
祖母は話を切ると私を立たせ尻ポケに手を突っ込み引き出すと、その手には大量の毛のようなものが握られていました。
「これがヤガキの毛だ。あれらは自らの毛を使って獲物に印をつける、今回○○とD君が逃げることができたのは運が良かっただけ、もう二度とその森にはいったらだめだよ。」
祖母の話が一段落したところで私は祖母のくれたお守りについて尋ねました。
「それはねぇ、○○に害を与えようとするモノからお前を隠すためのものだ。ただ姿を見えなくさせるだけだから声を出したら意味はなくなってしまうんだよ。」

その後私とDはその森に一切近づくことはありませんでした。A、B、Cは3日後に森を出てすぐの道路脇で倒れているのが散歩中のオジサンによって発見され病院に運ばれたようですが、意識が戻ることはなく亡くなりました。今でも祖母のお守りは肌身離さず持ち歩いています。

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