奇々怪々 お知らせ

不思議体験

綿貫 一さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

腕の夢
短編 2024/09/20 22:50 807view

その手に押しつぶされて、黒い街とともに、僕は消えた。

僕は、ベッドの中で目を開いた。

カーテンの隙間からは、夜明け前の薄明かりが差し込んでいる。
びっしょりと寝汗をかいていた。

汗が喉元を伝い、それを左腕で拭った。
右腕で、重い体を支えて起き上がる。

どうしようもなく喉が渇いている。
僕は部屋を出て台所に向かった。

ブゥーーーーーーーーーン……

大きな冷蔵庫から、かすかな振動とともに重低音が響いている。
僕がそのドアを開くと、ひんやりとした空気が汗に濡れた頬を叩いた。

冷蔵庫の中には腕が一本、よく冷えて入っていた。

〈了〉

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