ベテラン刑事菅沼の胸糞事件ファイル
投稿者:ねこじろう (147)
東京都内私鉄沿線沿いのガード下にあるその屋台は、週末の夜になると仕事帰りの会社員で賑わう。
だが平日のその日の夜、狭いカウンターには二人の男性が並び座っているだけだ。
グレーのスーツ姿の新人刑事大島がジョッキのビールを一口飲むと、隣のベテラン刑事菅沼の横顔を見ながら言った。
「ところで先輩が今まで扱ってきた事件で印象に残ったものを、良かったら教えてもらえませんか?」
白髪交じりの髪にくたびれたジャケット姿の菅沼はしばらく上方のどこか一点をじっと見ていたが、やがて徐に口を聞く。
「そうだな印象に残ったものというか、今も不可解で胸糞悪いのはいくつかあるな」
「不可解で胸糞悪い?それってどんな事件だったんでしょうか?」
興味を感じた大島は尋ねた。
菅沼は一つ軽くため息をつくと、改めて語りだす。
「あれは確か10年くらい前だったかな。
取調室奥の窓から漏れ聞こえるセミの声にも勢いが無くなってきていた、今時分の頃だった。
朝から大きめの事務机の前に座る俺の正面に座ったのは、どう見てもその場に似つかわしくない女だった」
「似つかわしくない女?」
「ああ、年齢は30代後半で肩までの艶やかなブラウンの髪をきれいにセットしててな、ベージュ色のブラウスから漂う上品なコロンの香りで鼻腔をくすぐられた俺は思わずはっとしたんだ。
そしてナチュラルメイクをしたモデルのように整った顔立ちで『本日は刑事さん、わたしのために貴重なお時間をいただきありがとうございます。それではよろしくお願いいたします』って深々と頭を下げたもんだから、俺もつい『はい、よろしくお願いいたします』なんて丁寧に挨拶を返してしまったんだ。」
「何者なんですか、その女性は?
いったい何をやらかしたんですか?」
大島が尋ねる。
菅沼が続けた。
食べたとき気づきそうだけど、髪の毛を混ぜ込んだパスタは想像するだけでキモ。
面白かったです。
コメントありがとうございます━ねこじろう