11号室:エレベーター
投稿者:うずまき (21)
短編
2024/07/22
12:51
1,873view
考える暇もなく、激しい引っ張り方にカットソーは伸び勢いよく背中をエレベーターの閉まりかけた扉にぶつけた。
「やばいっ…!!」
必死に抗い、渾身の力で身体を前方へと。
信じられない程の力だった。
ビリッと音を立てて背中で生地が裂けたと同時に、下がり始めたエレベーターとの「繋がり」が断ち切れて反動で今度は前のめりに。
慌てて振り向いたその先…エレベーター内で男はニタニタと不気味に笑みを浮かべつつもどこか悔しそうだった。
やがてエレベーターと共に男の姿が階下へと消えて行く。
ニヤニヤニタニタ笑ったまま。
我に返って今起こった事を整理しようと無意識に手を背中に回す。
目視出来ないながらも、カットソーが激しく裂けて破れている事は安易に理解出来た。
「ん?」
その場でカットソーを脱いでみると、破れたあたりに何かが感じられた。
断ち切れた釣り糸が着いたままの釣り針だった。
もし、真冬で破れにくい分厚めのアウターを着てたら…。
もう2度と深夜にエレベーターで同乗するのはやめようと決めた。
前のページ
2/2
この話は怖かったですか?
怖いに投票する 8票
※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。