12号室：シネコン

おれは映画が大好きで、それを1番の趣味にしている。気心の知れた友人達と観るのも、独りで黙々と観るのもいい。

この日はたまたま1人で、気になっていた洋画のホラー作品を観に来た。
指定していたシートに身を委ね、手にしていたラージサイズのドリンクをホルダーに。

もうロードショーから随分日数が経過していたせいで、観客はまばらだったにも関わらず、すぐ後ろに誰かが座った気配。スーツ姿の男だった。

『トナラー亜種かよ。空いてるのに。』

そんな事を思いながらも、以後はストーリーを楽しんだ。

クライマックスに差し掛かった頃、スクリーンを注視していた目を背後から突然触られた。

｢っ？？｣

軽く触れられた感じだった為、違和感のみで痛みもなかった。

帰宅後、鏡を凝視して注意深く確認したが特に何もなかった。
だが、3日ぐらい経った頃から目やにが酷くなり目を開けるのも困難になった。
膿のようなドロドロとした目やにが止まらない。

流石に不安になり眼科を受診すると、医者の診断はこうだった。

｢淋菌に感染してますね。放置してたら失明でしたよ。｣