あの夏への扉
投稿者:綿貫 一 (31)
長編
2024/06/05
22:43
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「――そうですか、駄菓子屋の娘さんが行方不明。
すみれの店内にも侵入した形跡が?
物騒ですね。伯母さんも気を付けてください。
はい、失礼します」
電話を切り、台所へ向かう。
私は、大型の冷蔵庫の前に立つ。
扉を開けると、涼やかな空気が火照った身体から一瞬で熱を奪っていく。
あの夏の日を思い出す。
見上げれば、巨大な入道雲が浮かんだ真っ青な空。
視線を下げれば、万緑に覆われた山々。
どこまでも広がる水田。
懐かしい田舎町。
草と、土と、汗の匂い。
耳に残る蝉しぐれ。
口の中によみがえる、ラムネアイスの爽やかな甘さ。
つないだ手と手。
僕と彼女。
冷凍庫の中には、左右に整然と、白い手首が並べられている。
どれも、同じくらいの年齢の、小学3年生くらいの、少女の手首。
つい先日、この聖殿の中に加わった少女のものを取り出し、頬ずりをする。
白い。
細い。
冷たい。
希。
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何となくこれを思ったw