カウンセリング
投稿者:Mine (24)
私の問いかけに蚊の鳴くような声で彼女は返事をした。かなり緊張しているのが手に取るようにわかる。まず不登校になったきっかけが知りたいがそれには相手の信頼を得ないといけない。
スカートの裾を握りしめながら小さな声ではい、いいえ位しか意思表示をしない彼女だが雑談の中で好きな音楽アーティスト同じだったという事が分かり、共通の話題も見つかった事で徐々にではあるが彼女の口数も次第に増えてきた。踏み込んだ話はしないように意識をする。今はまだその時ではない。この仕事に焦りは禁物だ。
その日は雑談だけで終わり、1時間に満たない面談ではあったが確かな手応えを感じた。
3回目の面談日では殆ど打ち解け、彼女は笑顔もみせる事も多くなり、私のことをアキちゃん、と親しげに呼んでくれるようにもなった。
楓という人間の輪郭がだいぶ鮮明になる。
こうして話てみると彼女も同年代の子と何も変わらない普通の女の子なのだ。
今は少し不安定なだけで。
ただ、不可解なのは学校側は彼女の情報を私に開示してくれなかった事だ。
学校側とも綿密な連携を取れれば更に問題解決に近づけると思ったが担任教師と校長が言うには外部の者に彼女の事については許可なく話さないで欲しいと母親から要請されているそうだ。
着任して日も浅い嘱託の非常勤カウンセラーの私は外部の者、というわけだ。
4回目の面談日、いよいよ現在の不登校の理由に話の焦点を合わせた。いつものように他愛もないお喋りから始め、徐々に本題へとシフトしていき、そしてついに——
「私、好きな男子に告白して、断られて、それで、もう全部終わりだと思って」
彼女は涙を流し、しゃくり上げながら理由を打ち明けてくれた。
なんだ、その程度で、と大人は思うかもしれないがこの年代の子にとっては告白が失敗するのはまさにこの世の終わりに等しい一大事なのだ。
私は泣いている彼女の頭にそっと手を乗せた。
「頑張ったね。偉いよ。大丈夫。大人になっていい経験したなって、笑える日が絶対来るから」
「アキちゃんは結婚、してるんですか」
珍しく彼女の方から問いかけてきた。
「うん、2つ歳上の夫がいるよ。実は今お腹に赤ちゃんもいるんだ」
すると彼女は目を見開き、私のお腹に視線を向けた。
「楓にもそのうち素敵な出会いがあるから。あなたならきっと優しくて幸せで素敵なお母さんになれると思うんだ」
「私がお母さんに・・・」
最後、ゾッとしました。
( ゚д゚)。
輪廻転生、生まれ変わり(*´∀`)。
あるんやな、ホンマに(*´∀`)。
ストーリー展開、ディテールにも隙がないし、文章力も確かでオチも秀逸。文句なく傑作です。
リーンカーネーション物。
良いですね。
同じ投稿者として、悔しいがこの話は大賞に値すると思う。
多分一般票で稼ぐのは限界があるんだろう。常連さんは不可解な票の伸びがあって、正直萎える。
楓さんはあなたを選んで生まれてきたんですね。もしくは、一瞬娘さんに憑依したのか。
自殺者はそう簡単に転生はできないカルマを背負うと思っていますが、今生では幸せに育んであげて下さい
LGBTの人達…今も弱い弱い存在なのだという問題の一石を、怖い話の場にも投じられたMineさんに拍手を送りたいと思います。Mineさんは、弱者の視線で物事を見られる方ですね。素晴らしいと思います。
ただ、“伝える”という点では、拝見していて矛盾を感じたり、すんなり分からない箇所が幾つか ありました。
まず、冒頭に、学校カウンセラーとして勤務している、と現在形で書かれていたのが、楓の件 以降、過去形になっているのが腑に落ちません。。
次に、遺書が残されておらず、同席もしていなかったお母さんが、先生に「地獄に落ちてください」と強く言えるだけの因果関係があったのかどうかを知り得たことに不自然さを感じました。
更には、ちょっと厳しくなりますが、カウンセラーなら、このぐらいの事では仕事を辞めません。落ち度がない訳ですから。この程度の事で責任を問われるのなら、カウンセラーは何も言えなくなっちゃうと思いませんか?
ご自身が書かれた文章を、矛盾や誤りがないか、注意深く読み返され、また広く世間に目を向けられて、問題がどこにあるのかを、より深く考えていかれると更に良くなると思います。ちょっと厳しい事を書きましたが、応援しています。頑張ってください。
恐ろしい……アキちゃんの娘は何処に?
こ、こわっかたです。
マジかー
そういうオチ…
幸せ=結婚して母親になること思い込んでるカウンセラーはやだなぁ。たまたまマタニティハイだったとしても向いてないと思う。