ハーメルン
投稿者:綿貫 一 (31)
さっちゃんも、うちの陸と同じくらいの年齢で、その日はお母さんと一緒にこの公園に遊びに来ていました。
そして、お母さんがちょっと目を離した隙に、姿が見えなくなったのです。
慌てて公園内を探し回りましたが、見つかりません。
ママ友たちも手分けして探したところ、公園から離れた住宅街の側溝にはまって、泣いているさっちゃんを見つけたのでした。
幸い、怪我は大したことなく、今は家で安静にしているそうです。
「じゃあ、その――今度は誰が?」
「佐藤さんとこの海斗(かいと)くん。
溜め池に落ちて、溺れかけたんですって――」
話を聞くと、海斗君の場合も、お母さんと一緒にこの公園に遊びに来ていたそうです。
そして、同じように母親が目を離した隙にいなくなり、公園から30分ほども歩いたところにある溜め池に行き、柵をくぐって落ちたのだそうです。
これまた幸いだったのは、偶々通りかかった大学生の青年が、海斗君が溜め池に落ちる、まさにその瞬間を見ていたことでした。
大学生は慌てて溜め池に降りて、海斗君を救出してくれました。
海斗君に怪我はなかったものの、すっかり風邪をひいて寝込んでいるそうです。
私は、他のママ友も思っているであろう考えを、思い切って口に出しました。
「――ふたつとも、この公園からけっこう離れた所で起こってますよね……?
このぐらいの年の子が、そんなに遠くまで、一人で歩いていけるんでしょうか……?」
さっちゃんの場合は、住宅街の側溝。
この公園から20分。
海斗君の場合は、溜め池。
この公園から30分。
2歳前後の子供からすると、どちらも、ひとりでたどり着けるか疑問な距離だと思います。
「やっぱり……、不審者かしら……?」
葵ちゃんのお母さんが、おずおずと口を開きました。
皆、そのことを考えていたようです。
暗い表情のまま、お互いの顔を見つめ合っています。
この公園周辺に、親の目を盗んで、子供を危険な場所まで連れていくような、そんな不審者がいるかもしれない――。
誰もその姿を見ていないので、想像の枠を出ませんが、不安要素がある以上、用心に越したことはありません。
そこで、皆で話し合い、しばらく公園に子供を遊びに連れてくるのは自粛することを決め、他のママ友達にも、メールで不審者についての注意を呼びかけることにしました。
その日は、それで解散となりました。
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ハラハラドキドキ面白かったです。
読みやすく面白かったです
犯人は誰だろう?
お母さんやお父さん…じゃないしな