ある豪雨の日に出会った女
投稿者:Nilgiri (3)
「当たり前ですよ。
あの頃は、お店を始めたばかりだったのに、
店の中のもの全部捨てることになっちゃったんですから。」
もちろん、私も近くの大きな川が氾濫して大変な被害をもたらしたという出来事は知っていたのですが、身近な人の被災話を聞いたのは初めてでした。
「わたしはね。
当時、消防団をやっていたから救助もやったんだけどね。
実は今でも悔やんでいることがあるのよ。」
そんな風に会長さんは、ある不思議な救助体験を教えてくれました。
水害が起こったその夏は、梅雨が中々明けず雨が異常に多かったそうです。
警報は出ていたものの、多少の雨にはみんな慣れてしまっていたというのも被害を広げた一因だったのかもしれません。
その日も朝から雨は降っていましたが、特に昼を過ぎてから雨の降り方が尋常でない様子になりました。
町内には、すぐそばに川があることもあり、
短期間に降り注いだ雨はあっという間に川を氾濫させました。
「そばの川から、ゴーッってものすごい音がして、これはただごとじゃないって思ったね。
数時間の間にすごい量の雨が降ったものだから、
浸水した車が濁流で流されたり、あちこち酷い有様だったね。」
特にこの町内では、道路が大の大人の胸の辺りまで浸水していたというのだから、その惨状は察するに余りあります。
緊急事態だということで、会長さんは消防団の救助用ボートを使って、町内の見回りに行きました。
日頃乗り慣れない、ボートのオールを懸命にこぎながら、逃げ遅れた人たちを何人も助けてまわりました。
「水の流れが速かったからね。
流れに逆らって、ボートを漕ぐのは大変だったよ。でも人の命がかかっているからね。」
そして会長さんは、○×書店の前の電柱に女性が一人しがみついているのを見つけました。
急いで女性の方へボートをこぐと、小柄な女性は肩まで浸かってぶるぶると震えながら、やっとのことで電柱につかまっているような様子だったそうです。
「ほら、こっちに手を出して。
しっかりつかんでくださいよ。ボートに引き上げますから。」
会長さんがそう声をかけるものの、女性はこちらに振り向こうともしません。
「・・・しい。・・・しい。」
何やら、小声でつぶやいて、ボートに背を向けたままでした。
そこで会長さんは思いました。
若い女性のようだし、水で服が体に張り付いた状態でこちらを振り向くのが恥ずかしいのだろうと。
kanaです。(旧姓kama)
「じろうの怪談朗読」拝見いたしました。素晴らしいです。もうけっこう出されているんですね。
自分もそのうちチャンネル持ちたいなぁ~と思っていたので、うらやましいです。
声に自信はないので、自分もVOICEVOXや、ずんだもんとか、考えてます。
さすがにずんだもんは厳しいか・・・。
応援しております。チャンネル登録もさせていただきます。
ボクの作品も使えそうなのがあったらどんどん使っちゃってください。では~
読みやすい。場面が浮かんで来そう。
kanaです。(旧姓kama)
なぜか書き込みが反映されませんでした。youtubeのことをあんまり書くとダメなんかな?
応援してます。見に行きます。
長文なのに飽きる事がない作品でした。
kana様へ(もし見てくださっていれば…
いつも作品を拝読させていただいております!
コメントに、チャンネル登録まで…嬉しいやらありがたいやらで、大変恐縮です。
下手の横好きで、動画にまで手を出したのですが、まだまだ試行錯誤の状態です。
私は、最近人気のずんだもんをはじめ、30人前後のキャラクターの声を無償で利用できるVOICEVOXを使って動画を作っていますが、最近は色んな音声ソフトが出ていますから、動画を始めるときは悩みますよね。
でも、毎回感服するほど引き出しの多いkana様の怪談、もし動画を作られる予定があるのであれば、とても楽しみです。
コメント、本当にありがとうございました!