ある豪雨の日に出会った女
投稿者:Nilgiri (3)
「恥ずかしいのと、命とどっちが大事ですか!
見ないようにしますから、こっちにいらっしゃい。」
さすがに、そこまで会長さんに言われた女性は、俯きながらも会長さんの手をつかみました。
会長さんは、冷え切った女性の体をどうにかボートへ引っ張り上げて、肩にバスタオルをかけてあげます。
「その女性は、まるで氷のようにひんやりした体でね。
すっかり水の中で冷え切ってしまっていたんだろうね。
このままじゃ危ないと思って、いそいで避難所へ向かったのよ。」
恥ずかしがっていた女性に気を使って、会長さんは真っすぐ前を向いてボートを漕ぎました。
ところが、女性を乗せた電柱から、2区間くらい漕いだところで、
“ぼちゃんっ”
という大きな水音が背後で鳴りました。
慌てて後ろを振り向いた会長さんは驚きました。
女性がいなくなっていたのです。
「しまった!
ボートから落ちてしまったんだと思って、オールを使ってボートの周りの水をかき回して探したよ。
何しろ水が濁っていて、茶色くてなんにも見えないんだから。」
どうにか見つけようと数十分奮闘したものの、結局水の中から女性を見つけ出すことはできませんでした。
「本当に申し訳ないとは思ったけどね。
30分も水の中では、ね…。
それに、まだまだ他に救助を待っている人がいたし。
仕方なかったなんて言葉では、すまないけどね。」
当時のことを未だに後悔しているらしい会長さんは顔をしかめます。
「会長さんのせいじゃないわよ。
むしろ、助けてもらった人はいっぱいいるんだから。
あの状況で、十分よくやってくれたじゃない。」
女将さんが、そう慰める声を会長さんは遮りました。
「あの人、たぶん体も冷えて意識も朦朧としていたのよ。
せめてボートに寝かせておけば、落とさずに済んだかもしれないのにねぇ。」
会長さんの意外な過去を知り、私も何か言葉をかけてあげたかったのですが、
会長さんは話を続けました。
「それでね、せめてご遺体だけでもすぐに見つけてあげたいと思って、水が引いてからあのあたり一帯を一生懸命探したんだよ。
ところがね。どこにもそんな女性の遺体は見つからなかったんだ。」
kanaです。(旧姓kama)
「じろうの怪談朗読」拝見いたしました。素晴らしいです。もうけっこう出されているんですね。
自分もそのうちチャンネル持ちたいなぁ~と思っていたので、うらやましいです。
声に自信はないので、自分もVOICEVOXや、ずんだもんとか、考えてます。
さすがにずんだもんは厳しいか・・・。
応援しております。チャンネル登録もさせていただきます。
ボクの作品も使えそうなのがあったらどんどん使っちゃってください。では~
読みやすい。場面が浮かんで来そう。
kanaです。(旧姓kama)
なぜか書き込みが反映されませんでした。youtubeのことをあんまり書くとダメなんかな?
応援してます。見に行きます。
長文なのに飽きる事がない作品でした。
kana様へ(もし見てくださっていれば…
いつも作品を拝読させていただいております!
コメントに、チャンネル登録まで…嬉しいやらありがたいやらで、大変恐縮です。
下手の横好きで、動画にまで手を出したのですが、まだまだ試行錯誤の状態です。
私は、最近人気のずんだもんをはじめ、30人前後のキャラクターの声を無償で利用できるVOICEVOXを使って動画を作っていますが、最近は色んな音声ソフトが出ていますから、動画を始めるときは悩みますよね。
でも、毎回感服するほど引き出しの多いkana様の怪談、もし動画を作られる予定があるのであれば、とても楽しみです。
コメント、本当にありがとうございました!