あの鼻歌が、風に乗ってかすかに聞こえてくる。
しかし、平和ボケしていた僕は、路地道へと足を踏み入れていました。
鼻唄は聞こえず、冬の冷たい風の音だけが聞こえる。
もう少し…もう少しで路地道を抜ける。
その時、
ん〜♪んん〜んん〜!!
今までで1番大きな音。しかも耳元で、鼻唄が聞こえる。それと同時に後ろに何かの気配を感じる。
唐突な事に、僕は頭がパニックになり、考えるよりも先に足が動き家に向かって走り出します。
ですがその途中で息が切れてしまい、手を膝についていると、いつの間にか鼻唄が聞こえなくなっている事に気が付きます。
僕の隣を、パトカーが走り去っていく。
「なんだ!?」
「人が刺されたらしい!」
さっきいた場所に、野次馬が集まっている。
ん〜♪んん〜ん〜♪
あの鼻歌がどうしても拭えなくて、急ぎ足で家に帰り、誰もいないリビングで、イヤホンをつけ、大音量で音楽を流しましたて、コタツに潜って、うずくまっていました。
あの鼻歌はなんなのか。
人が刺されたと言っていたが、僕も一歩遅ければ、襲われていたのか?そんな思考がぐるぐると頭の中を巡る中、20分ほどたったでしょうか?
少し落ち着いてきた僕は、あることを考えます。
もしかするとあの鼻歌は、僕に危険を伝えていたのではないのだろうか?
もしあの時感じた気配が、人を刺した犯人なら、鼻歌を聞いて走り出していなかったら、今頃僕は死んでいたのかもしれません。
しかし、ひとつの疑問が浮かぶんです。
鼻歌は、僕にしか聞こえていない。
しかも、鼻歌が聞こえだしたのは数ヶ月前。もし犯人が、その間。「僕」を狙っていたのだとしたら?
まぁでも、さすがに警察も来ている訳だし、もう大丈夫だろう。
そのうち大音量の音楽がうるさいと感じ、僕はイヤホンを耳から外す。
ん〜!んん〜ん〜ん〜!!
さっきよりも大きい。今まで聞いた鼻歌とは比べ物にならないほどの音量の鼻歌が、耳元で鳴り響く。
まさか……。
ガタンッ!
玄関の方で、……物音がする。
何で主人公が狙われたんだろ