ザイコウセイ
投稿者:綿貫 一 (31)
『黒い穴?』
っていう、落書きがしてあったってさ。
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3番目は1999年の7月。
夏休み前のことだ。
この時は、セイジくんとハルカちゃんだ。
ふたりは、同じ6年4組のクラスメートだった。
放課後、セイジくんはハルカちゃんを屋上に誘った。
屋上っていったら、普段はドアに鍵がかかっていて、出入りできない場所だ。
だけど、この時はドアの鍵が壊れていて、それを知っている一部の児童だけが、先生に内緒でこっそり遊び場にしていたんだね。
ところで、1999年7月といえば、世間はノストラダムスの大予言で騒いでいた時期だ。
隕石?
戦争?
大地震?
とにかく何かが起こるんじゃないかって、不安と、妙な期待が渦巻いていた。
そんな空気に後押しされて、セイジくんはハルカちゃんに告白をしたんだね。
「――ごめんなさい」
これにはセイジくんもガッカリだ。
せっかく「世界が終わる時は、僕と一緒にいてください」なんて、精一杯格好つけた告白のセリフを考えたのにね。
だから彼が、ハルカちゃんを夕暮れの屋上に閉じ込めちゃったのだって、失恋ゆえに子供っぽい行動だったと許してやってほしい。
時間にしたって、ほんの30分程度のことだ。
はじめはドア越しに、「セイジくん、開けて!」という声がしていたが、やがてそれは泣き声に変わり、そのうちなにも聞こえなくなった。
「いい加減許してやるか」なんて勝手なことを言いながらドアの鍵を開けた彼は、びっくり仰天さ。
そう、彼女は消えていた。
もちろん、地上に落ちてしまった、なんてことはなかったよ。
なのに、鍵のかかった密室の屋上から、忽然といなくなってしまった。
彼女もまた、「神隠し」に遭ってしまったんだ。
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面白かった
なんか面白かったです。語り口が良かったです。