ザイコウセイ
投稿者:綿貫 一 (31)
ドアを開けると、夕陽に照らされて真っ赤に染まった教室に、アカネちゃんの姿はなかった。
でも、彼女のランドセルだけが、ポツンと机の上に置かれていた。
『トイレかな?』
ミドリちゃんは思った。
アカネちゃんたら、教室に着いたら急にお腹が痛くなって、ランドセルをここに置いてトイレに行ったのかもしれない。
そう思ったんだね。
だからミドリちゃんは女子トイレに行ってみた。
でも、トイレの中に電気は付いていなかったんだ。
もちろん個室のドアもすべて開いていて、アカネちゃんの姿はなかった。
じゃあいったい、アカネちゃんはどこに行っちゃったんだろう?
三階の他の教室も覗いてみたけど、やっぱりいない。
二階。
一階。
やっぱりいない。
ついにミドリちゃん、先生たちのいる職員室にまで行ってみた。
「失礼します。あのぉ……アカネちゃん、いますか?」
そこにいた先生たちは顔を見合わせた。
下校時刻をだいぶ過ぎて、まだ児童が残っていたこと自体が意外なことで、これは厳重に注意すべきことだった。
しかし話を聞けば、もうひとり、児童が校舎の中にいるはずで、しかも姿が見えないという。
先生たちは手分けして、学校中を探し回った。
すべての教室にトイレ。
体育館や特別教室。
プールの更衣室まで見て回った。
けれども、アカネちゃんは見つからない。
念のため、アカネちゃんの家に電話をかけたが、まだ帰っていないという。
アカネちゃんのお母さんも心配になってやってきて、先生たちと一緒に学校中、それに通学路中を探したんだけど、ついにアカネちゃんは見つからなかった。
その日のうちに警察へ捜索願いが出されて。
そして。
それっきり。
§
面白かった
なんか面白かったです。語り口が良かったです。