夜行列車
投稿者:綿貫 一 (31)
12月29日午後10時00分、僕の乗った寝台特急サンライズは、東京駅の9番ホームを発車した。
仕事の関係で、東京で一人暮らしをしている僕は、盆や暮れ、実家のある岡山に帰省する際、よくこの夜行列車を利用する。
岡山に到着するのは翌朝6時27分。
約8時間半の鉄道旅行だ。
飛行機や新幹線よりも遅い時刻に東京を出発して、どんな交通手段よりも早い時刻に岡山に着ける。そして、その間ゆっくり寝ていられる。
時間を有効に使うことができる、そこが夜行列車の長所である。
そして何より、たった一晩でも旅行気分を満喫できるところが、僕は気に入っていた。
東京駅のホームに、クリーム色と臙脂(えんじ)色のツートンカラーの車体が入ってくる姿を見ると、僕の胸はいまでも、学生時代のようにわくわくと高まってしまう。
サンライズの客車は2階建てになっている。
僕は、B寝台シングルというクラスの、2階の部屋を手配した。
このタイプは鍵のかかる一人用の個室で、部屋のスペースのほぼすべてがベッドで占められている。
部屋自体は狭いが、大きな窓が天井までカーブを描くように作られていて、展望は最高だ。
2階の方が、より見晴らしが良い。
列車が動き始めると、東京駅で買っておいた駅弁と缶ビールを取り出す。
これも鉄道旅行の醍醐味のひとつだ。このためにわざわざ夕食を遅らせていたのだ。
腹ごしらえを済ませて人心地つくと、僕は部屋の明かりを消した。
そしてベッドに寝転がったまま、ぼんやりと車窓を眺めた。
繁華街のネオン。
住宅地の家々の明かり。
真っ暗な田畑。
河川に架かる鉄橋。
そして、終電を過ぎて無人になった駅のホーム。
さまざまな夜の景色が車窓を通り過ぎていく。
部屋の中は暖房が効いて暖かく、かすかな車体の揺れが眠気を誘う。
備え付けのオーディオからは、ゆるやかな洋楽が流れていた。曲名はわからない。
夜が、静かに深まっていく。
………
………
………
午前1時半を過ぎた。愛知県に入った頃だ。
夜行列車懐かしい。
とても面白かったです。
先日サンライズ出雲に乗車したので、室内や窓の感じなど情景が浮かびました。
文章力に惹きつけられました