タケシは顔を真っ赤にする。
「はあ? 怖くねーし!
あんな顔、ちっとも怖くねーし!」
「そっか。
ねえ、今日は僕のオモチャ貸してあげるから、一緒に寝てもいいかな?」
そう言ったマモルの手は、小さく震えていた。
…………
…………
…………
「ねえ、ママ」
ホノカは、キッチンで夕食の支度をしている母親の背中に話しかけた。
「なあに? お腹すいた?
ご飯、もうちょっと待ってね」
軽やかな鼻歌が聞こえる。
「ねえママ、おじちゃんはどこに行ったの?」
鼻歌がピタリと止まり、母親はコンロの火を止め、ゆっくり振り向いた。
背の低いホノカに目線を合わせるために、背を曲げる。
逆光になった母親の顔は、にこやかだった。
「おじちゃんはね、お家に帰っちゃったって、ママ言ったよね?」
ホノカの言う「おじちゃん」とは父親の弟のことだった。
実直な兄に対して、彼は軟派な性格をしており、大学時代の友人にベンチャー企業設立の話を持ち掛けられ、多額の出資をした後で、その金を丸ごと持ち逃げされ、借金取りから逃れるためにホノカの家にやってきたのだ。
半年前のことだった。
おじちゃんはホノカに優しかった。
いつも家にいて、ホノカとよく遊んでくれたし、遊びにだって連れていってくれた。
両親が留守の時には、よく一緒にお風呂に入って遊んだ。
おじちゃんはホノカの身体をくすぐるのが好きで、ホノカはケラケラ笑っていた。
お風呂から出て、彼はホノカの髪をバスタオルで拭きながら、
「今日、おじちゃんとお風呂で遊んだことは、ママたちにはナイショだよ」
そう言って笑っていた。
おじちゃんは、先日から姿が見えなくなった。
ママは「お家に帰ったのよ」と言っていた。
おじちゃんの家には、以前、何度か遊びに行ったことがあった。彼がホノカの家に転がり込む前の話だが。
そして、彼の家は砂場の底ではない。
























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