ホノカは、その疑問を母親にぶつけていた。
瞬間、母親が見知らぬ人の顔に変わった。
それほどまでに、彼女の表情が変わったということだ。
以前、家族で古い温泉旅館に行ったことがあった。
風呂場に続く長い廊下に、様々なお面が飾り付けてあった。
「これはヒョットコで、これはオキナだよ」
父親はホノカの身体を腕で持ち上げて、お面を見せながらひとつひとつ説明した。
その中に、今の母親の表情に似たものがあったことを、少女は思い出していた。
「怖いねえ? これはハンニャだよ――」
「どうして砂場で遊んだりしたの!
ママ言ったよね?
砂場はワンちゃんとかネコちゃんたちのトイレになってたりするから、汚いから遊んじゃダメだって!
ああもうどうして……、
タケシくんとマモルくんのお母さんが連れて行ったの? あの人ホントに……っ!
おじちゃんを見たの?
そのこと誰かに言った?
ホノカひとりで見たの?
タケシくんとマモルくんも見たのね?
そう……、
そうなのね……。
いいホノカ、おじちゃんはそんなところにいないのよ?
明日もタケシくんとマモルくんと遊ぶの?
……わかったわ」
ホノカの顔に唾を飛ばしながら、母親は一気に話すと、電話をかけに行った。
キッチンにはホノカひとりが残された。
………
………
………
翌日、タケシ、マモル、ホノカの三人は、砂場で穴を掘っていた。
昨日、目印の枝を刺したところだ。
三人の手には、子供用の薄いゴム手袋とプラスチックのスコップが握られている。
三人の顔は陰鬱だ。
嫌々ながら掘っている。
止めたいと思っても、彼らの背後に立つ、ニコニコ顔のホノカの母親が、手を止めることを許さなかった。























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