とあるマニアの心霊写真
投稿者:kana (210)
その中には文字通り結婚式の写真が入っていたのだが、どれも新郎新婦は違うし、披露宴の参加者が違う。当然Sさんは写っていないし、まさかSさんが結婚式専門のカメラマンだったという話も聞かない。
「これ見てください。カワイイですよ」そう言って小学生というフォルダを開いて見せてくれた。中にはこれからピアノの発表会にでも出るかのようなオシャレをした女子小学生が写っていた。確かにかわいいが・・・。
「こっちもなかなかいいですよ」そう言って「中学生」というフォルダを開いた。入学式で校門の前に立つ少女。教室の風景、卒業式の写真。先生と一緒に記念撮影・・・。
「これはお宝かも」そう言って見せてくれた写真には女子高生たちが映っていた。学園祭の様子、学校帰りに寄ったファミレスでのおしゃべり、友達と一緒にディズニーランド、そしてコスプレして何かのショーに参加・・・。楽しそうな学園ライフだ。
「んんん・・・ちょっと待ってください、これなんの写真なんですか?Sさんが撮ったの?」
「違いますよ・・・実はですね・・・ちょっとあっちの部屋に来てもらえます?」
Sさんがそう言うので、ボクらは一旦オタク部屋を出て、もうひとつ別の倉庫として使っているという部屋に入った。そこには大きなダンボールがいくつも置かれており、それを見てボクは驚いた。全部カメラ・・・いわゆるコンデジ(コンパクトデジタルカメラ)という部類のカメラだ。それが大きなダンボールいっぱいに詰められている。
「う~ん・・・1000個じゃ効かないかなぁ・・・途中から数えるのも面倒になってほったらかしなんだけどね」
「1000個以上も??・・・どうしたんですこれ?」
「いや、さっきの2個1、3個1のカメラと同じでさ、最初はリコーのPXだったかな・・・キレイなライムグリーンの筐体で防水タイプのコンデジなんだけど、レンズを保護するガラスが割れていてね、これを修理するためにもう一個中古のPXを買ったら、これもガラスが割れててね。結局これも3台買って1個作るみたいなことをしているうちに、コンデジの美しさに囚われてね・・・。ほら、コンデジって一時期すごく流行ったでしょ。メーカー各社から毎年いろいろな種類が出て、デザインもカラーも豊富でね、ミノルタなんて今はもうないメーカーのもあったりして・・・それでつい集めたくなってたくさん買い集めたんだよ。そしたらさ・・・そのうちあることに気が付いたんだよね・・」
「な、なんですか?」
「オークションサイトなんかではさ、コンデジを40個とか50個とか、100個まとめて1円スタートなんて出品者がいるんだよ。もちろんジャンク品さ。壊れ物、未確認モノだ。業者もいちいちガラクタを精査してる暇もないからね。十把一絡げでとにかく在庫整理みたいに売るわけ。そうするとね、実は壊れていない物もたくさん混じってる。そしてね、SDカードとかの記録媒体が入ったままのカメラもけっこうあるんだよ」
「じゃあさっきの写真って・・・そのジャンク品カメラに記録されていた写真なんですか?」
「そうなんだよ。なんでSDカード入れたまま業者の手に渡ったのか知らないけどさ」
ボクはちょっと頭の中で想像した。
デジカメを中古屋さんとか質屋さんに売ることはあるだろう。その時に記録媒体を抜き忘れたのか?・・・思い出を大切にする多感な年ごろの子たちが、こんな大事そうな写真を確認もせずどこかへ売るとは思えない。もしかして、忘れ物とか、落とし物、盗品なんかが巡り巡って業者に集められて、オークションサイトに出回っているのでは・・・?」ボクは疑問を感じ始めていた。
「怖いのがね・・・」Sさんがつづける。
「SDカードとか抜いて、これで大丈夫と思って中古屋に売る人もいると思うんだけど、アマイんだよねぇ・・・デジカメには内蔵メモリっていうのがあって、記録媒体を入れなくても数枚は写真が撮れるようにできてるんだよ、とくにコンデジはね。その内蔵メモリに記録された画像を消し忘れて中古屋に売っちゃった人もけっこういるみたいでね・・・たくさんのプライベートな写真が人知れず世間に出回ってるのさ。・・・エッチな写真もあるけど、見る?」
「いや~・・・ていうか、もしかして心霊写真もその中のひとつなんですか?」
「まぁそーゆーこと。とりあえず見てみる?・・・じゃ戻ろう」
ボクらは再びPCの前に座った。
「ほら、これがエッチな写真ね」心霊写真を見る前におもむろにエッチフォルダを開いて見せてくれた。そこには湯上りのオバサンがタオル一枚を肩にかけて写っており、確かに全裸だが、顔がノーメイクで怖い。お風呂に漬かった女の子の写真もあった。彼氏にでも撮ってもらったか、笑顔で撮られている。
「・・・いやいや、これはフツーにヤバイでしょう」
「まぁボクのとこで流通をストップさせたわけだから、人助けしたみたいなもんだよ」
「う~ん、ものは言いようですね・・・」
「じゃ、心霊写真ね」
そう言って見せてくれた写真は、ミドリやピンクに激しく変色した写真、オーブのようなものがたくさん映った写真など、まぁ心霊写真に詳しいボクから言わせるとトンだ失敗写真ばかりでどれも雑誌の特集で取り上げるほどでもなかった」
「けっこう厳しいね・・・じゃあこれはどうかな? なかなか怖いよ」
そう言って開いてみせてくれた写真は、どこか山の中の廃墟の写真らしかった。
その壁の天井付近から、こちらを覗く顔があった。若い男性に見えるが・・・どう見ても人の身長より高い位置に顔があるように見える。
これは恐いわ~ヒェ~~~
怖。
誰が撮ったのか分からない写真を持っている事もマニアならではですね。
Sさんのその後、写真ををどうされたのか気になりました。
とても読み応えありました。
↑kamaです。早々とコメントいただきありがとうございます。励みになります。
今回のは、ほぼオカルトや怪談なんてどーせ作り話だから怖くないよ、という怪談アンチの人をマジで心配させる話にしてみました。「あなた、コンデシどこに売りました?」
kamaです。書き忘れてました。このお話は創作ではありません。みなさまお気を付けください。
怪談と言いつつ怪談以外の部分がとても参考になる