とあるマニアの心霊写真
投稿者:kana (210)
「今ね、こーゆー古いカメラがオークションとかで1000円とか、バカみたいな価格で買えるんでね。まぁもうフィルムの時代じゃないし、誰も買わないからね。で、ボクはカメラ好きなもんだから、そーゆーとこから中古のカメラを買い集めて、修理したりしてコレクションに加えてるワケ。やっぱ中古なんでみんな個性的な故障をしててね。で、同じ機種を2個3個と買って、部品交換して修理して、完璧な1個を作り上げる。そうするとまた愛着が沸いてきちゃってね・・・w」
「へぇ・・・」
「そうそう、そのXR500は不思議なんだけど、2個別々のトコから買ったのに、2個ともファインダーをのぞいたらダニが歩き回っててねwww」
そう言ってSさんはゲラゲラ笑いだした。
「えっ・・・」思わず手にしたXR500を体から離す。
「それは大丈夫! ちゃんと中身キレイなものを修理したやつだから」
「よかった~。・・・その3個1で余ったやつはどうするんですか?」
「あぁ、またオークションで売るんだよ。世の中にはパーツだけ欲しい人もいるんでね。たまに2個1で作ったカメラを売ることもあるよ。カメラ本体よりレンズの方が売れるけど」
そう言ってSさんは部屋の片隅のダンボール箱を指さした。そこにはズームレンズをはじめとして、大きなレンズが山のように入っていた。
「古いレンズはホコリまみれだったり、カビが生えてることがよくあるんだけど、バラしてレンズを磨いて組み立ててやれば、今でも現役で使えるからね。レンズを欲しがる人はまだけっこういるよ」
「へ~レンズの分解掃除なんかできるんですか」
「これは今実験中なんだけど・・・」そう言ってSさんが見せて来たレンズは黄色く変色していた。
「黄変って言ってね、昔アメリカで開発された放射性物質入りのレンズでね、ライカのズミクロンや日本のタクマーとかいろいろあるんだけど、当時は光の屈折率が良くてバリバリ映りの良いレンズとして持てはやされたんだけど、微量な放射能のせいでガラスが黄色く変色しちゃうんだよね。まぁこのまま変色した味のある写真撮ってもいいんだけど、紫外線当ててこれを除去する方法もあるらしくて、今その実験の最中ってわけ」
「へぇ~~~」なんだか元カメラ小僧だったボクの心も踊りだしていた。
話がどんどん長くなるのでそろそろ端折るが、現在師匠として付き合っているカメラマンとも、実はこの古いレンズで知り合ったのがキッカケだという。師匠はデジタル一眼の最新機種を使っているのだが、それにアダプターをつけて古いレンズを組み合わせて情景的な写真を撮ったりするのが得意で、Sさんはその知識と技術でカメラマンのアシストをしているのだとか。だからよくあるADの小間使いというわけではなく、むしろカメラマンにアドバイスしたり、自分のレンズを提供したりもしているらしい。
「へぇ~。で、Sさん自身は写真は撮らないんですか?」
「ボクは芸術的センスゼロだからね。機械的に写真は撮るけど性能を見るためであってね」
「なるほど」
ボクはすっかりカメラ談議に夢中になってしまい、肝心の本題を忘れるところだった。
「そうそう、ところで心霊写真の件なんですが・・・」
「あぁ、そうっすね、じゃあお見せしましょうか。丸椅子どうぞ」
SさんのPCの前に座り、写真を見せてもらう事にした。写真はフィルムではなくデジタル撮影されたもののようだ。
PCの中はフォルダできれいに整理されている。・・・が、ちょっとした疑問が沸いた。
「随分たくさん写真フォルダありますね。でもちゃんと整理されてて、さすがですね」
Sさんはさっき自分では写真はやらないと言っていたはずだ。でも、その割に随分たくさんフォルダがあるじゃないか・・・。
「しょうがないなぁ、ちょっとお見せしますか」そう言ってSさんは「赤ちゃん」と名前のついたフォルダを開いた。そこにはたくさんのいろいろな赤ちゃんの写真があった。みんな顔が違うし、赤ちゃんを抱いてる親の顔も違う。しかもどう見ても家庭内で撮った写真だ。
「ん?・・・これってSさんが撮ったんですか? 赤ちゃんばっかり??」そう聞くと、
今度は「結婚式」と書かれたフォルダを開いて見せた。
これは恐いわ~ヒェ~~~
怖。
誰が撮ったのか分からない写真を持っている事もマニアならではですね。
Sさんのその後、写真ををどうされたのか気になりました。
とても読み応えありました。
↑kamaです。早々とコメントいただきありがとうございます。励みになります。
今回のは、ほぼオカルトや怪談なんてどーせ作り話だから怖くないよ、という怪談アンチの人をマジで心配させる話にしてみました。「あなた、コンデシどこに売りました?」
kamaです。書き忘れてました。このお話は創作ではありません。みなさまお気を付けください。
怪談と言いつつ怪談以外の部分がとても参考になる