「うん、わかったよ、姐さん!」
やけに素直に九郎はベランダに向かった。どうやらそこから脱出するルートもあるようだ。
朽屋は部屋を出て、階段へ向かう。エレベーターは逃げ場がなく危険だ。
音もなく階段を駆け下りる。
まず二階に出て、慎重にクリアリングする。
もし敵が隠れていれば、後で背後から襲われる危険があるからだ。
だがここには誰もいないようだった。
さらにそこから銃声のする1階へ降りる。
地下に通じる階段は別な場所にあるため、地下のクリアリングはする必要はない。
身をかがめ、壁に隠れながら1階の様子を瞬時に確認する。
一瞬見えたその映像を瞼の裏に浮かべながら冷静に分析する。
血まみれの床に転がる大勢の黒服たち。その遺体の山の中に君臨する馬に乗った騎士。
全身真っ赤な中世のヨロイを身にまとい、先ほど地下で倒したはずの真っ赤な馬にまたがっている。あの馬だけでもやっかいなのに、赤い騎士は右手から薔薇の棘のムチを伸ばし、
人間たちを一気に串刺しにし、また一気に首をはねているようだ。
おそらくあのムチを硬直させ、槍として使うこともできるのだろう。
「朽屋、状況確認。屋敷内民間人死傷者多数。目標は赤いヨロイの騎士。恐らくバルベリトと思われる」状況をツグミ隊に知らせた。
(了解。現在梟(フクロウ)隊の到着待ちです、少佐は無理なさらず待機してください)
「忍足大尉のコールはどうですか?」
(コール応答ありません)
「了解、強行偵察進めます」
(少佐、待ってください、危険・・・)朽屋は携帯を切った。
朽屋は状況をすばやく確認しながら、1階へ出た。
障害物に隠れながら歩を進め、状況を詳しく調べる。
「チッ・・・」組長と、それを護衛していた桐原の遺体だ。
そしてその奥で日本刀が床に突き刺さっているのが見えた。
それは忍足が組長から預かった『小豆長光』だった。
屋敷の外から銃撃している者がまだおり、赤い騎士はそちらに歩を進めた。
朽屋はその隙に慎重に日本刀のある方へ向かった。
「くっ・・・しっかりしろ!・・・」そこには血まみれの忍足が倒れていた。
「・・・遅かったな、朽屋・・・オレはもうダメだ・・・なんつって・・・」






















kamaです。朽屋瑠子シリーズ第11作目は、対バルベリト戦です。
今回は登場人物も多いですが、個性ある人たちが多いので好きになっていただけたらいいなーと思います。尚、ネタバレですが、文中8pでヤクザの事務所が「渋谷区ショウトウ3ノ2ノ5」となっていますが、これはもちろん架空の住所で、知ってる人は知っていると思うのですが、1992年に公開されたウッチャンナンチャンの主演映画「七人のオタク-カルトセブン-」で、主人公の南原さんが無線オタクをつかまえるための罠として流し続けた謎の暗号「・・渋谷区ショウトウ3ノ2ノ5・・渋谷区ショウトウ3ノ2ノ5・・」というのが元となっております。今回のお話では渋谷区を舞台にしたかったためです。ラストも朽屋がキルビルやってる姿を想像しなから読まれると、楽しさ倍増かと思います。ロマンホラーということで、お楽しみください。
面白かったです。一気に読みました。
今回も面白かったです
このサイトの他の作者の作品も、朽屋瑠子にかかれば全てハッピーエンドになるのに!
↑kamaです。コメントありがとうございます。19ページもあるのに一気読みしていただいてありがとうございます。感謝!!
個人的に朽屋瑠子シリーズをおもしろいと言ってもらえるのが一番うれしいです。自分で読んでて一番おもしろい作品ですからw
今朝も会社に行く前に「どこか間違いはないかな~と読んでたら、途中からおもしろくなってきて止まらなくなり、あやうく遅刻するとこでした。フ~アブナイ~~
瑠子シリーズ今回もドキドキしながらも楽しく読ませて戴きました。九郎ちゃんと瑠子のバディ、今後が楽しみです。
読んでいるうちに目が冴えてしまい寝不足です。
今回のも面白かったですよ。
でも、組長が死ぬなんて?
気になるのは九郎が朽屋の体を拭いてるときに赤ちゃんみたいって笑うとこがあるんですが、えっ、朽屋の体にベビーなところがあるってことですか?!
↑kamaです。コメントありがとうございます。
ドキドキしながらみていただいて、本当に感謝です。
寝不足にして、スイマセン!楽しんでいただければ本望です。
朽屋の裸で赤ちゃんみたいなところ・・・たぶん、肌ですかね?わかりませんが。
・・・組長と桐原が死ぬのは、実は僕も葛藤がありました。なにも殺さなくてもいいんじゃないかと。逆にここでニンニンを死なせてしまおうかなとも思っていました。
でも、ニンニンが死ぬと呼び出した朽屋の責任問題にも発展しそうだし、明るく終われない気がしたのでニンニンは生かしました。組長と桐原さんももったいなかったですが、彼らはやはりヤクザですから、極道には極道の道があります。死んで花実が咲くというか。実際彼らは作品内で人殺しをしたと語っていますから、作品を読んだ人の中には人を殺したやつがなぜ生きながらえているのかと反社に対して嫌悪感を抱く方もいると思います。だからこのような結末が似合いだったのかな、と思います。問題は九郎ですね。彼(彼女)は本編内で5人殺してると言ってます。なのに最後は明るく朽屋と仲間になりそうな雰囲気ですが・・・果たして殺人を犯しているキャラが普通に受け入れられるのか・・・というのは非常に難しい部分もあると思います。ボクの作品の作り方からすると・・・九郎も組長と同じようにどこかで死ぬ運命にあるのか・・・あるいはこの呪縛を説くために、九郎は実は殺しなんかやってなかったという設定を用意するか? 子供時代からの洗脳で心神喪失状態だった?
さてどうなるでしょうか。本文内では自分の死をいとわない行動が目に付く九郎ですから、これから先も死線に最も近いキャラとして登場していくかもしれないですねぇ。・・・先の事は判りませんね。
これを初めて読んだんですけど面白かったです!
他のも見てきますw
文体が面白いだけでなく、作者の深い知識に感心させられる。
アクションの表現もいいので一気に読んでしまう。
シリーズの他の作品も急いで読みたいし、今後も追いたいと思った。