町内会会長の久保山さん
投稿者:ねこじろう (147)
「本当に物騒な世の中になってきましたから、お宅もくれぐれもお気を付けくださいね」
女性の妙に上品で丁寧な物言いが、階下の玄関口から聞こえてくる。
滝井のクラスメートの唐島がコミックから目を離すと、口を開いた。
「誰?」
ベッドの端に座る滝井は、コミックから目を離さずに答えた。
「久保山さん。
うちから二軒隣に住んでて、町内会の会長やってんだよ。うちの母ちゃんと同じ年なんだけど、いつも紺色の渋い着物着ててさ、何かと世話焼きなオバサンなんだ。
でもさ、昔は人付き合いの嫌いな変人だったようなんだ。
これは母ちゃんに聞いたんだけど、あのオバサン以前は息子と二人で暮らしていたみたいで、3年ほど前、気の毒な形で息子を亡くしたそうなんだ」
「気の毒な形って?」
唐島がそう言ってまた滝井の方を見る。
「ほら、あっただろ、当時この近辺で通り魔事件が、、、
子供ばかり二人殺されたやつだよ。
犯人はまだ捕まっていないみたいなんだけど、久保山さんの小学生の息子も犠牲者の一人だったそうだ。
それでしばらく彼女、なんか人が変わったみたいになって駅前で情報提供を求めるビラを配ったり、警察署に乗り込んでいっては、何で犯人を捕まえられないの?と直談判したり、挙げ句の果ては自ら刑事まがいの捜査活動をして町内の誰某が怪しいとか、とんでもないデマを流したりしたりしていたようなんだ。
それからはしばらく家にひきこもっていたみたいなんだけど、今年は自分から名乗り出て町内会の会長になったんだ」
しばらくすると部屋入口のドアが開き、エプロン姿の滝井の母が姿を現すと、険しい顔をしながら二人の顔を交互に見てから、おもむろに喋りだした。
「今ね、久保山さんが来てから言ってたんだけどね、昨日、二丁目の葉山さんとこの下の娘さんが救急車で運ばれたらしくてね、今も意識不明で重体らしいのよ」
「え、美結ちゃんが?どうして?」
葉山美結ちゃんは滝井と同じ小学校の一つ下で、5年生の女子だ。朝の集団登校の時にいつも彼は一緒に登校しているから知っていた。
滝井の母が険しい顔のまま続ける。
「一緒に下校していた女の子が言ってたそうなんだけど、ジュースでも買おうと二人で自販機に立ち寄ったらしいのよ。
ほら、そこの子供公園の入口門にあるとこよ。
そしたらね、下の取り出し口に何故だか紙パックのジュースが一つあったみたいで、美結ちゃんがそれを取って一口飲んだみたいでね、そしたら急に胸を押さえて苦しみだしてね、最後は泡を吹きながら倒れたみたい。
ジュースの中に何かの毒物が入れられていたみたいよ。
誰かのいたずらかしらね、怖いわねえ」
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その日の夕刻、制服姿の警官が滝井の家に来て、改めて葉山美結さんの件を説明すると、不審な人物を見掛けたら通報して欲しい旨を伝えると帰っていった。
どうやら、警察も動きだしたようだ。
早速その夜、公民館で緊急の町内会が開かれて、久保山さんの提案で、大人たちが持ち回りで町内を見回りするようになった。
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(゚Д゚)
人が一番恐い(;´д⊂)。
その通りですね!
─ねこじろう
めちゃくちゃ読みやすくて入りこんじゃいました。
悪魔にとりつかれています。お祓いをしないと。
コメントありがとうございます─ねこじろう