ハーメルンの笛吹きおばさん
投稿者:rark (32)
「ハーメルンの笛吹きおばさん」
「なぁ。あのおばさん誰なんだ?」
僕が小学校6年生の頃。下校中に友達がそんな事を聞いてきます。
友達が指さす方には、公園のベンチに1人のおばさんが座って、派手な格好で、フルートを吹いています。そして、そのまわりに、小学校1〜2年生くらいの子供が、5人ほど集まっているんです。
そして、そのおばさんがフルートを吹き終わると、聞いてくれていた子供達に、飴玉を配り帰って行く。
まぁ、今思えばフルートは珍しいものだったので、子供が集まるのは、別に不自然では無いと思いますが、当時の僕のクラスでは、そのおばさんは不審者のような目で見られていたわけです。
「ハーメルンの笛吹き男」をご存知でしょうか?見知らぬ男が町に現れ、ネズミを追い払ってくれますが、大人たちはお礼をしなかったため、その男は、笛を吹きながら、子供たちを連れ去ってしまった。1284年に起きた事件が元になっていると言われていますが……
まぁ、そんな話とそのおばさんを重ね合わせて、僕らのクラスの間では
「ハーメルンの笛吹きおばさん」なんて呼ばれていました。
そこで友達が言い出します。
「なぁ。あのおばさん。調べてみようぜ!」
僕ははじめは反対しましたが、何人かの友達は乗り気だったので、僕もその輪の中に入ることにします。
それから3日が経ちますが、おばさんはいつも通りフルートを吹いているだけで何も変わりはない。実験として、友達の1人が試しに演奏を聞きに行って、飴玉を貰ってきますが、それはスーパーに売っているような飴玉で特に怪しいものでは無い。何か事件性を期待していた僕らにとっては、少し拍子抜けだったんです。
ところがある日、夕方におばさんが笛を吹いていると、おばさんは急に立ち上がり、子供たちを引き連れていく形で公園を出ていきます。
ついに事件か!? と、期待した僕らは、おばさんが引き連れて歩く集団を尾行する形で後をつけていきます。しかし、おばさんの後ろにいた子供たちは、1人、1人と家に帰って行き、最後の子供を家に送り届けると、おばさんは何事も無かったように帰って行きます。またもや事件性はなし。
友達「なんだよ。あれじゃあただの良い奴じゃねーか!」
僕「まぁ……良い奴なら良い奴でいいんやけど……」
気づけば、時間は6時を回っているので、僕らもそこで諦め、帰ることにします。
ところが次の日。いつも通り友達と談笑しながら帰っている時です。
ちょうど公園の前を歩いている時、いつもとは違う光景が僕らの目に入ります。あの例の笛吹きおばさんが、近所に住む紗奈ちゃん(仮名)の腕を引っ張り、何処かに連れて行こうとしています。周りの子供も、何がなんなのか分からず、混乱している様子なんです。僕らはとっさに走って行き、おばさんと紗奈ちゃんを引き剥がそうとします。が、小学生の僕らの力では、到底おばさんには敵いません。すると、その騒ぎを聞きつけたのか、大人の男の人が走って来て、おばさんと紗奈ちゃんを引き剥がし、紗奈ちゃんの手を引き、避難させます。そのおばさんは僕らを殴りつけ、紗奈ちゃんを追おうとしますが、もう追いつかれそうにはありません。
次の日の朝。僕のクラスではそのハーメルンの笛吹きおばさんの話題でもちきりでした。そんなワイワイしている僕らをよそに、先生が入って来て、僕らに席に着くように言います。なんだろう?と思っていると、先生が口を開きます。
「残念なお知らせがあります。」
先生はそう告げ暗い顔で話します。
「昨日。2年生の秋元紗奈(仮名)さんが、行方不明になりました。」
終了
打ちきりの漫画のような終わり方
ハーメルンではなくハールメンですか?
投稿者です。
コメントでもありました。こちらでミスがありましたので、修正いたしました。申し訳ありません。
乱入した男が連れ去った…ってコト!?
男が連れ去ろうとしてるのを助けようとしてたって事でしょ