鬼のいる街
投稿者:kana (210)
女の子だけで深夜まで遊んでいた高校2年の夏の夜。
・・・えぇ、イケナイ事だとは判ってるんですけど、私と友達は街にくり出し、
ハメを外して遊んじゃってたんです。
しばらくして遊び疲れてまったりしていると、いかにもチャラそうな男たち数人がやってきて、囲まれてしまいました。ナンパです。
でも、こっちは女の子だけで遊びたいし、いかにもシツコイし、何か危険な雰囲気も感じたので、私が矢面に立って友達を守ることにしました。
実は私、中学の時からテコンドーを始めていて、大学でレスリング部に所属していた兄ともよくスパーリングしてもらっていたので、腕には少し自信があったのです。
でも本当に自信があったのは腕ではなく足。私の長い足から繰り出される蹴りは、兄の頭部にまで届き、時として兄を痛めつけてコテンパンにしたこともありました。
「お兄ちゃんって、ホントにレスリング強いの?」と疑問を投げかけたこともあったくらいです。兄はへらへらしながら私にはかなわないと逃げるばかり。でもおかげで綺麗に蹴りをいれることができるようになっていました。
実戦は初めてですが、私は友達の手前もあってイキリ立っていました。
こんな軟弱そうな男ども、数秒あれば全員倒せるわ・・・と考えていました。
男たちが友達の手を掴んで引っ張って行こうとしたのを見て、私はキレました。
男の手を払いのけ、蹴りをお見舞いしてやり、返す刀で別の男を殴り倒しました。
「逃げて!!」男たちが怯んでる隙に友達を逃がすことには成功しました。私もすぐに逃げるつもりでいたのですが・・・男たちはすぐに立ち上がり、私を取り囲んだのです。
「チっ、この女、・・・テコンドーだろ今の蹴り!」
「ムカツク!!」
「だが、軽いな。このクソ生意気な女に本物のストリートファイトってもんを教えとくか」
そう言うとやつらは私に殴りかかってきました。
防御の姿勢からも衝撃が伝わってくる、本気の男のグーパン。
興奮した人間は普通よりも簡単には倒せないことがあるといいます。
私もやり返しますが、男たちにはほとんど通じません。
戦いながら、自分の実力がこんなものだったのかというショックを受けました。
私は弾き飛ばされ、髪を掴まれ、より暗い所へ引きずり込まれました。
「きゃあぁ!!」
私の着ていた服がビリビリと破かれてしまいました。
私はここへきて自分がかなりヤバイ状況にあることを自覚しました。
身をかがめ、丸くなって防御態勢をとりますが、男どもがその上からのしかかってきたり、蹴りを入れてきたりします。おそらくこの時にはもう肋骨や腕の尺骨が折れていました。
が、突然暴行が止まり、一瞬シンと静まり返ったかと思うと、
「うわぁ!」と男たちの叫び声。激しい音、ドカドカと殴り合うような音がし始めました。
私は防御姿勢を緩め、隙間から少し様子を覗いてみました。・・・そこに居たのは・・・
「鬼!!」
「鬼だ!!」
妹の窮地を救う兄貴の兄妹愛に感動しました。最後のオチで兄が亡くなっていたとは何だかせつない気持ちになりますね。
↑kamaです。コメントありがとうございます。
鬼の話なんて・・・と思いながら読んでてグッときた読者さんがいてくれることを願っておりました。読んでいただいてわかるように、こちらの作品は創作なのですが、ボクは創作を書くときでもかならずどこかに本当のことを入れて書くことにしています。ではどこが真実だったのか・・・
それは、妹が最後の方で吐露した「大好きなお兄ちゃん」というところです。
実はだいぶ以前になるのですが、実際の話で、仲の良い兄妹の兄が死に、そのお葬式で妹が「返してよ!大好きなお兄ちゃんだったのに!!」と言って泣きずれているのを見たことがあり、いつかそれを物語の中に入れて、世間のお兄ちゃんどもに、妹の切実な気持ちを感じ取って欲しいと思っていたのです。
なのでボクの作品に出てくる妹たちはだいたいお兄ちゃんっ子になってます。
2023/6/25午後3時半頃。
「妹助け溺れたか、中1男子死亡」のニュース。
仲の良かった兄妹が実際に引き裂かれる事件がおきた。
お悔やみ申し上げます。
とてもよかった
↑kamaです。コメントありがとうございます。
こちら、朽屋瑠子シリーズ第12弾【鬼ぃちゃん事件】にて解決編を公開中です。
ご覧ください。