ツミキノイシドコロ
投稿者:rark (32)
「ツミキノイシドコロ」
僕が小学生の頃。当時の僕は、秘密基地づくりにハマっていて、友達と毎日のように山に入り込んで、日が暮れた頃に山から降りてくる。
みたいな、小学生ブームを送っていました。。しかし、その山は、人の私有地なので、勝手に入り込んでいたわけではなく、その山を持っている、おばあさん。まぁ僕らは金森の婆さんなんて呼んでましたが、その金森の婆さんに、ちゃんと許可を得て、山に入り込んでいるわけです。しかし、山に入ることは、簡単に承諾してくれたのですが、その後に、妙なルールを聞かされました。
「山の中で何をしようと自由だが、一つだけ決まりを守らないといけない。山に入る前に、入り口に祠がある。そこの前に、石が積んであるから、その上に必ず石を置くこと。それを守るなら入ってもいい。それが、お前たちの身代わりになる」
かなり歳をとっているにもかかわらず、ものすごい気迫を感じたのを覚えています。そんな怪しげな決まりを聞いて、やっぱりいいです。って
普通は言うと思いますが、裏を返せばその山には、僕ら以外は立ち入れないわけだから、マジの秘密基地じゃん!って、みんな意気投合して、僕達は喜んで山に入って行ったわけです。
山の入り口、まぁ金森婆さんの家の裏になるのですが、そこには、婆さんの言うとおり、小さな祠があり、その前には、平らな岩の上に、石が二つ積み上げられたものが二つ。三つ積み上げられたものが一つ。と置いてありました。そしてその祠の横に、丸くてツルツルした石が何個か落ちてあるので、その石を積み上げてから、山に入って行きます。
そして何日かたったある日、いつものように石を積んで、この日は5人で入っていきます。そして秘密基地製作途中。5人の中の友人のCがあることを言い出しました。
「やっべー。誰かトンカチ持ってない?」
と言ったのですが、この中の誰もトンカチなんて持って来ていません。しかし、家までは若干遠いので、めんどくさがって、誰も取りに行く気にはなりません。するとAが、
「近くにボロ小屋みたいなのあったじゃろ?トンカチくらいあるんじゃない?」
と言いました。確かに、歩いて1分もしないうちに、ボロ小屋が見えてくるのですが、そこは周りの木々もより生い茂っていて、薄暗く、かなり不気味だったんですね。流石に一人では行く気にはなれず、捜索もかねて、みんなで行く事にしたんです。
少し山の奥に進んで、1分もしないうちにボロ小屋が姿を現しました。
そして、ボロボロの木製の扉を開けようとしたのですが、開くどころか、びくともしません。他にも入れそうな場所を探したのですが、入れそうな場所は一切ありませんでした。仕方ない。家から持ってくるか。という事で、小屋を後にしようとしたその時、
ガタンッ!
という、大きな音が響きました。見ると、さっきまで動かなかった、木製のドアが外されています。中は真っ暗でよく見えなかったのですが、僕も、その他四人の友達も、その小屋から目が離せない状態になっています。そして、
一番起きてほしくなかった予想が的中しました。そのドアの中から女の顔のようなものが顔を出しました。髪はボサボサで長く、顔は真っ白で、痩せ細った顔、そして目は黒く、その中に黒目と思われる部分である紫色の目がこちら5人をじっと見ている。そしてその女は、口から黒い液体を垂らしながら、高い女の声で、
「…ワチェラ…ミダ…」
みたいな訳の分からない声を出し、ゆっくりとこちらに近づいてきます。みんなその場で固まっていたのですが、最初に奇声を上げたのはCでした。Cは叫び声を上げながら、元来た方向へと走っていきます。それに続くかのように、一斉に我先にと、走り出して行きました。気づくと僕らは麓の祠のところにいました、走っている間は息を切らす余裕もなく、ようやくみんなゼェゼェ言っています。少し落ち着いてから、ふと祠の方を見ると、そこには、どれも二段だけ積み上がった石があり、僕らの積み上げた石は道に散らばっています。風で倒れた。というわけでではなく、明らかに人が壊したような形跡でした。とりあえず、この場から去ろうと、家の横を通ろうとしようとした時、後ろから、
「…ワチェラミダ!」
という大きな声が聞こえてきて、振り返るとさっきの女が、山の入り口のところに立っていました。追いかけてきた!?と思い、もう、みんな訳の分からない叫び声を上げながら、自分の家へと帰って行きました。
そして次の日、金森の婆さんが、
亡くなったとの情報が入りました。当然その事と昨日の出来事が、関与してないとは到底思えないのですが、その件があってから、山には近づかないようにしています。しかし、金森の婆さんが亡くなったという知らせを受けた時、僕の脳裏には一つの光景が浮かんだんです。
3組あった石の、二つの石が積み上がった物と、
一つだけ、3つ積み上がっていた、あの石が。もしかしたらあの石って……あの婆さんのだったのかも知れません。
終了
婆さんのご冥福をお祈りします。
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