「あぁ・・・。今朝、組織から私の所に連絡が来た。昨晩の事だったらしい。私の遠隔透視でも見てみたが、確かに数馬クンは亡くなっていたよ」
「どうして・・・」
「コトリバコ・・・というものを聞いたことはあるかい?」
「はい、噂には・・・実物は見たことありませんが」
「まぁ簡単に言うと、とある地方で兵器として作られた呪物だ」
「それが数馬となにか関係が?」
「コトリバコと似たような呪物は日本国内にいくつかあるそうだ。そのうちのひとつが数馬クンの実家である麻生家で保管をしていたそうだよ。麻生家の当主は元封魔組織の一員だったそうだ。引退した後も呪物の保管に携わっていたそうなのだが・・・」
「まさか、数馬クンの死神って・・・」
「おそらく、数馬クンが幼少の頃に実家でそれを見つけて、封印を解いてしまったのだろう。当主が突然死したことから、封印を解かれた事故が起きたのはもう10数年前のことだったと思われる。組織がそれに気付いたのはつい数年前で、ずっと行方を追っていたらしい」
「じゃあ、我々がずっと死神だと思っていたものって・・・」
「あぁ、死神ではなく、兵器としての純粋な呪いそのものだったんだ。そしてそれを知らずに使い続けた数馬クンは、あの死神の姿をした呪いから解放されると同時に、死のカウントダウンが始まったというわけだ。呪いを使ったものは、また同時に自分の呪いで殺されるという掟そのままに・・・」
「神父様・・・私が数馬クンを殺してしまったんでしょうか・・・」
うつむきながら朽屋が問う。
「キミに罪は無い。あまり落ち込むな。いずれはこうなる運命だったのだ。それに、あの時撃たなければ神永 澪は死んでいただろう。キミは人助けをしたんだ。もっと誇りに思いたまえ」
そう言われたものの、朽屋はやはり少し落ち込んだようだった。
「頼子クン、彼女のメンタルを癒すよう、ヒーリングをかけてやってくれ」
「わかりました。(鋼のようなメンタルだと思ってたんだけど、意外な一面ね)」
「あと、こーゆー時は体を動かすのが一番だ。朽屋クン、このあとグラウンド10週だ」
「えええ~~・・・(この神父、案外スパルタ・・・)」頼子がつぶやく。
この日、朽屋 瑠子はグラウンド10週のコースレコードを叩きだし、また伝説を作った。
神永 澪は、ぽっかりと心に大きな穴が開いたようになり、数馬の葬式でも泣けずにいた。
葬式から帰る道すがら、数馬と初めてのキスをした多摩川の土手を歩いた。
土手にはクローバーが生い茂っており、それを見た澪は、自分でも訳が分からなかったが四つ葉のクローバーを探そうと思い立ち、必死に探した。なかなか見つからなかったが、小一時間ほど探して、やっと四つ葉のクローバーを探し出した。
なぜかわからない。どうしてなのかまったく思い出せない。
だが、澪はその四つ葉のクローバーを握りしめ、激しく泣いた。
・・・心置きなく泣いたことで、澪は数馬の事をしっかりと心に刻み、また前を向いて歩けるような気がしていた。
「おーーーい! 澪ちゃーーーん!!」遠くから澪を呼ぶ声がする。


























kamaです。
朽屋瑠子シリーズも今作で6作目です。過去作品も読まれますと世界観が広がってより楽しめると思います。
また、今回のお話は以前投稿いたしました「四つ葉のクローバー」と「さようなら」そして「さようなら~その後~」というお話の解決編ともいえる内容となっていますので、合わせて読まれると楽しさも倍増かと思います。よろしくお願いします。
kamaです。
これはあくまでも個人的になのですが、今回これを書くときに・・・
朽屋瑠子=アンジュ・カトリーナ
貴澄頼子=リゼ・ヘルエスタ
神永澪=山黒音玄
四つ葉のクローバーの悪魔=ピーナッツくん
の声を当てながら書いていました。みなさんなら、どんな声をあてますか?
思わぬ展開で数馬君に憑いていた死神が違っていたなんて@_@このシリーズが実写版になったら観たい!瑠子シリーズのファンです。
↑kamaです。さっそくありがとうございます。13ページもある長編読んでくれてありがたいです。
そうですね~実写化とかあったらおもしろそうですね。漫画化やアニメでもいいですね。
どなたか奇特な同人作家の方がいたら、いかがですか?
kamaです。いくつかの誤字脱字、てにおはの修正をして、少し読みやすくいたしました。
よろしくお願いします。
Kama先生、久しぶりの新作ありがとうございます。以前から思っていたのですが本当はプロの作家でしょうか?
↑kamaです。楽しんでいただいてありがとうございます。ボクの素性は内緒にしておきます。読者の夢を壊さないのが作家たるもの・・・(てことは身バレしたら夢を壊す人なんだな)辞めておこう。
kamaです。
実はこの裏で暗躍している組織について「名前はないの?」という質問をいただいています。
ここでは封魔部隊といったり、単に組織といったり、あるいは朽屋が「お掃除部隊」と呼ぶこともありますが、設定上は名前はあります。
ただ、この組織は平安時代から陰陽師の集まりで構成された部隊であり、禁裏を魔物から守るのが主任務ということで、名前を名乗るといろいろ各方面に問題がありそうなので、物語上、名乗るのを自重しております。
「イギリス・チャーチル国王の載冠式に黒ずくめの死神が映る」
なんてニュースが流れてきました。
・・・まさかねぇ・・・。