【猫婆事件】-事件記者 朽屋瑠子-
投稿者:kana (210)
果たしてこの事件、霊の仕業か、UMAの仕業か、それとも・・・
・・・・・・
K子ちゃんの家の前に、朽屋のジムニーが停まる。
あいにくK子ちゃんはお留守。実はK子ちゃんはこの春から東京の名門中学校で寮生活に入っているそうで、朽屋はK子ちゃんのお父さんから事情を聴くためにここへ来たのだ。
「あんたが電話くれたクッチャルコさんかい?」突然声を掛けられた。
「あぁ、ハイ、くーちーや、朽屋瑠子と申します。月刊モーの・・・」
農業を営むK子の父親が、ちょうど午前の仕事を終えて一服するために一時帰宅していた。
「まぁお茶でもどうぞ」
「ハイありがとうございます。さっそくですがお父さん・・・」
「いやあんたみたいな若い子にお父さんって言われたらちょっと恥ずかしいな~」
「あはは、そう言われたら私も恥ずかしいですー」
「村にはもう若い女の子も少なくなってな、クッチャさんみたいなかわいらしい子が嫁っ子に来てくれたらみんな喜ぶんだがなぁ」
「あはは、考えときます」
「ほら、あの、向かいの家の若いモンがな・・・」
「お父さん!それよりも、例の件のお話を・・・」
「あぁ、そうかい?仕事熱心だねぇ」
お父さんの話を要約するとこうだ。
実はもう15年ほど前の話になるのだが、村のはずれに一人で暮らすお婆さんがいた。
何をしてそうなったのかは定かではないが、いわゆる村八分と言うやつで、村人から疎外されていたらしい。お婆さんには身寄りもなく、猫好きだったため、どこからか猫を拾ってきては一緒に暮らす生活をしていたそうだ。今で言う『多頭飼い』だ。
ただ、都会でなら大問題となる多頭飼いも、この村はずれにあるお婆さんの家に何十頭と猫がいても誰も困りはしなかった。おそらく一番困っていたのはお婆さん本人だろう。
エサに困っていたのは想像がつく。猫たちの大半は自分で狩りをして飢えをしのいでいたのだろう。仔猫が生まれるのも自然のままに放っておいたせいで、猫の数はどんどん増えていった。やがてお婆さんはどうかしてしまったのか、生まれた仔猫を間引いて、つぶして、猫のエサに混ぜて猫たちに与えるようになった。
「いや、この話は想像なんだがね、実は婆さんの家の台所からは仔猫の骨や皮がたくさん見つかってるんだよ」
朽屋は眉間にしわを寄せながらその話をじっと聞いていた。
やがて、お婆さんの遺体がご近所の人に発見される事となる。ご近所と言っても数百メートル離れている。さすがにあまりにひどい異臭が辺り一面に漂っており、通りすがりにおかしいと気付いたらしい。
発見当時のお婆さんの遺体は、猫たちにいくらか食べられた跡もあったという。
警察の調べでは事件性はなく、自然死として片づけられた。
大勢の猫たちも結局保健所が入って処分することとなった。
誰も幸せになれない多頭飼いの成れの果てであった。
「哀れな話ですね」朽屋がこぼす。
「K子が見たのはその婆さんが化け物になって出てきたものなんじゃないかと思ってね」
kamaです。先日投稿させていただいた「仔猫」というお話の後日談となりますので、合わせて読まれると楽しさ倍増かと思います。
またこの「朽屋瑠子」シリーズも今回で5作目となりますので、合わせて他の朽屋瑠子シリーズ、とくにケルベロスが登場する1作目を読まれると、世界観が広がって楽しめるかと思います。
朽屋瑠子シリーズは、自分で書いてて自分が一番楽しんでるかもしれません。
次回作もお楽しみに~
後日談待ってました!瑠子が見た猫の夢が仕事に繋がった所も不思議ですが、お茶目で可愛らしい一面が見られました。ケルベロスが従順になったのも猫好きの瑠子だからかな?ちゅーるのくだりがクスっと笑えました!
↑kamaです。ありがとうございました。
実はケルベロスはいろいろな伝説の中で、パンなどの食べ物をもらってごまかされることが多く、甘いもの好きとも言われています。チュールはおいしかったのかもしれませんね。
なんとびっくり、麗子の怪談恐怖箱さんで、この作品が朗読されてる!