さようなら (加筆修正版)
投稿者:kana (210)
数馬のクチが「よ」の形になった途端、1階から続く階段の下からニョキっと何かが突き出してきた。
それは刃のとても長い草刈り鎌に見えた。
「・・・う・・・」カズマのクチがゆっくりと「う」の形になった。
階段から伸びてきた鎌を持った、黒いフードをかぶった人物が頭を出した。得体のしれない真っ黒な影の中に隠れながら、1歩階段を上がって来た。
「・・・な・・・」カズマのクチがさようならの「な」の形になった。
ヤツが、階段をまた一歩上がって、こっちをにらんでいる。顔が見える。
ガイコツのようなミイラのような顔で目だけが赤くらんらんと光っている。
真っ黒なフードをかぶって巨大な鎌をにぎっているその姿は、誰もが知っている死神のイメージそのままだった。
ふと芳樹を見ると、眉間にしわを寄せて苦しそうな顔で自分の胸のあたりを鷲づかみしている。
「・・・」カズマが最後の言葉を口にしようとした瞬間
「わーわーわーわー!!」
ボクは居ても立ってもいられなくなり、意味不明なことを叫んで立ち上がった。
「ヤメロ、やめてくれ!数馬、芳樹! やめてくれ!!」
その瞬間、階段にいた死神はすーっと消え、バーガーショップの店内はいつもの色と光を取り戻した。
ついでに客たちが全員ボクに注目した。冷や汗がたらりと額を流れる。
その瞬間、「あっはっはっはーー!」と大笑いする数馬と芳樹。
「イェーイ、ドッキリ大成功~」
「てってれーーーー!」
「・・・えっ・・・いや、ドッキリって・・・?」
実は芳樹は数馬からこの話を相談され、知っていたらしい。
で、考えたのが一番ビビリなボクを驚かすために、二人で一芝居打つことだったのだ。
なんというバカだコイツら・・・。
「マジ~?・・・ひどすきるわ~。で、わざわざ死神のカッコしたやつを階段下にスタンバらせてたっていうの?」
呆れてそう問いただすボクに、きょとんとする二人。
kamaです。このお話のつづきがありますので、この後、投稿させていただきます。お楽しみに。
ちなみにですが、このお話は「創作」ではあるのですが、元ネタは自分の体験を元にしています。
子供の頃に、ある事をすると動物たちがかならず死ぬという現象がおこり、悩んだことがあります。
それは大人になってからもおこり、たまたま偶然に当時付き合ってた彼女にそれをしてしまい、彼女は急な熱と吐き気、腹痛で倒れ、病院に担ぎ込まれる事態となりました。ボクは三日三晩看病して、幸いにも死ぬことはなかったのですが、それ以来トラウマとなって気を付けています。
その体験をベースにしたお話ですので、完全な創作・・・というわけでもないんですよ。
で、何をしたらそうなったか、は秘密にしておきます。
読者の皆さんもまだ死にたくはないでしょうから。