さようなら (加筆修正版)
投稿者:kana (210)
「・・・実験?」
「そう、実験。・・・ウチの近所にすごくうるさい犬がいてね。人が近づくと吠えまくるんだ。だからそいつに向かって何度も別れの挨拶を口にしてやったんだ」
ゴクリとコーラを飲み込む。気のせいか体が冷え冷えとする。
「し…死んだのか?」
「うん。自分でも信じられなかったんだけど・・・死んだよ。
だからね、それ以降はもうお別れの言葉を言わなきゃいけないときはクチパクだけにしてるんだ」
「ひえ~…」ボクはちょっとビビりだしていた。
「あはははは」芳樹のやつは笑い出していた。
「おまえそれ2ちゃんのオカ板に書き込んだ方がいいぞ、おもろいわ」
「芳樹は信じないんだ」
「あったりまえだろ!偶然に偶然が重なって可哀そうなことになってるだけやん。一番可哀そうなのは数馬や。
こんなくだらないことでトラウマになって挨拶もろくにできんのやからな」
ボクたちの間では、ふざけている時によくエセ関西弁になる。だから芳樹は今、心配してる風を装って実はカズマのことをおちょくっている。
「ほら、オレにさよならって言ぅてみぃ。今ここで」
「えっ?」芳樹はたまにぶっ飛んだことを言う。怖いもの知らずというか・・・
数馬の話が本当だったらどうするつもりなんだろう・・・。
ボクの心配をよそに数馬をおちょくりつづける芳樹。
「わかったよ、言うよ。言えばいいんだろ?どうなっても知らないからな」
数馬が半ばやけになって芳樹に食ってかかった。
「わー、マジか?! ボクは聞かないからな! 耳塞ぐぞ」
そう宣言して両耳を塞ぐボク。それを軽蔑したような目で見る芳樹。
数馬がクチを開いた。
「芳樹・・・」長い沈黙の後に
「・・・さ・・・」さようならの「さ」の形にカズマのクチが動く。
その瞬間、バーガーショップの店内が、まるで色を失ったかのように急に暗くなった。
「・・・よ・・・」
kamaです。このお話のつづきがありますので、この後、投稿させていただきます。お楽しみに。
ちなみにですが、このお話は「創作」ではあるのですが、元ネタは自分の体験を元にしています。
子供の頃に、ある事をすると動物たちがかならず死ぬという現象がおこり、悩んだことがあります。
それは大人になってからもおこり、たまたま偶然に当時付き合ってた彼女にそれをしてしまい、彼女は急な熱と吐き気、腹痛で倒れ、病院に担ぎ込まれる事態となりました。ボクは三日三晩看病して、幸いにも死ぬことはなかったのですが、それ以来トラウマとなって気を付けています。
その体験をベースにしたお話ですので、完全な創作・・・というわけでもないんですよ。
で、何をしたらそうなったか、は秘密にしておきます。
読者の皆さんもまだ死にたくはないでしょうから。