雪踏む侵攻
投稿者:すだれ (27)
「君ねぇ…」
「悪い悪い。いやでも結構重要じゃね?明日の朝飯、俺の大事なルーティンが…!」
「ポタージュスープなら買ってあるからそれで我慢してくれ」
「えー白米にポタージュ?」
「案外合うかも…」
今度は此方の言葉が途切れる番だった。耳が確かに音を拾った。
友人の声、此方の声、2人分の足音とは別に。
ザク、と背後で雪を踏みしめる音。
「…他に何か味噌汁の代用になりそうなものは買ってないのか?」
「代用…ああ、」
歩調を早めると音も早まり、
「これは?カップの味噌ラーメン」
「朝から重くないかソレ…」
遅くすると背後の音も踏みしめるように遅くなる。
こちらを尾行している?いや、ただの通行人か。自分たちがいて追い抜けないでいるのか?
友人とは他愛のない会話を続けながら、背後への思考を巡らせる。
「おっ…と、すまん」
「マジで雪道歩き慣れてないのなお前」
「中々滑るな…」
思考を割いているせいか、足元が一層覚束なくなっている此方がよほど気が気じゃないのか友人は腕を掴んだまま進む。歩くたびに買い物袋がガサガサと鳴り、しかしその音に紛れて自分たち以外の雪を踏みしめる音は後ろにピッタリとくっついて歩くように聞こえ続けた。
やはり自分たちがいるせいで…というより雪道に足を取られてまごついてる此方が邪魔で追い抜けないでいるのではないか。
背後にいる誰かの目の前で友人にヒソヒソ聞くのも気が引けて、しかしこのまま道を塞ぎ続けるのも申し訳ない。
そう思ったので。
「…!?おい…!」
「ちょっと待て。靴ひもを結ぶ」
いっそ立ち止まって、背後の通行人に抜いてもらおうと思った。
背後からはザクザクと雪を踏む音が近付いてくる。
「なぁまだか…!?」
「もう少し…」
此方の腕を離し、両手に買い物袋を持った友人が此方と背後の間で忙しなく視線を泳がせている。
雪を踏む音。追い抜く瞬間に少しだけ通行人の顔を見てみようか、それにしても何で友人は少し焦った声を…
kamaです。うまいですねぇ。文章の組み立て方とか。好きです。