ひとつは、幼少のころからの病気が改善したため、運動ができるようになり、
今では中学のサッカー部員である。仲間と共に遊び、練習し、全国大会出場を目指すまでになっていた。そのことに涼のプライベートの大半が費やされた。
二つ目には、より子と会える教会が女子校の敷地内にあることだ。
多感なお年ごろになった涼にとってはさらに近寄りがたい場所となっていた。
そして三つ目には、やはりあの日の出来事。より子ちゃんを教会の外に連れていくことができないというもどかしさ。それを考えると、積極的により子ちゃんに会いに行こうとはなかなか思えなくなっていた。
涼の母親の声がする。
「涼、祝日で部活もないからって、だらだらしてないで、お部屋でも片づけたらどう?」
「はぁ~い」
曇り空で決して良い天気とは言えない祝日。涼は家でごろごろしていたのだが、
手狭となった自室の片づけをすることになった。
小さい頃から買ってもらったものを捨てずにとっておく癖が災いし、
涼の部屋の押し入れは今やいっぱいになっていた。イザお片付け・・・と思ったものの、
出てくるものに刻まれた思い出が、片付けの手を止める。
そんな中、小学生時代にハマっていた『鉱石採集セット』が現れた。
『ローズクウォーツ』を入れて置く場所だけがぽっかり空いている。
あのクリスマスイブの日に、より子ちゃんにプレゼントしたからだ。
涼の心の中に、より子ちゃんとの思い出があふれる。
病弱だった自分に初めて出来たガールフレンド。
いつも突然現れ、いつの間にかいなくなる不思議な少女。
教会でしか会えない謎多き少女。
それでも、いつもそばにたたずんで、一緒に花を見、虫を探し、
草に寝転がっては流れる雲を眺めていた。
なんでもない日常の風景なのに、やけに世界は美しく、
いつも暖かで幸せな気持ちの中にいた。
「より子ちゃん、今、どうしてるのかなぁ・・・」
涼の心の中には、少し不思議な感情が芽生えていた。
一緒にすごした甘酸っぱい思い出とともに、
少し世間離れしたような不思議な雰囲気を持つ少女。
自分の思い出は本当の出来事だったのだろうか・・・。
今となっては、まるで幻想でも見ていたかのような、ふわふわした感覚に陥る。























kamaです。先ほど投稿させていただいた「より子ちゃん」の裏で起きていた一大事件を書かせていただきました。まず先に「より子ちゃん」を読まれてからこちらを読むと、面白さも倍増かと思います。
またこの「朽屋瑠子」シリーズも今回で4作目となりますので、合わせて他の朽屋瑠子シリーズも読まれると世界観が広がると思います。
あと、今回27ページもの大長編となってしまいました。頑張って読んでくれた方、ありがとうございます。・・・これだと誰も怪談朗読してくれないだろうから、そのうち自分でやろうかな・・・と思ってます。
まるで吸い込まれるような感じで、最後まで拝読させて戴きました。続きを早く読みたいです。
↑kamaです。27ページもあるのに読んでいただき感謝です。
朽屋瑠子シリーズは今後、短編をいくつか出しつつ、たまに長編みたいな、そんな感じで出して行こうと思ってます。
kamaです。
涼君が押し入れの鉱石採集セットを見つけてより子ちゃんに再開するシーンに、
『ローズクウォーツが抜け落ちた鉱石採集セットのように、
涼の心にもぽっかりと隙間が空いているようだった。』
という一文を追加させてもらいました。
・・・詩的でしょ?
まさに、涼君の鉱石セットのくだりがホロリと来ました。短編物も拝読させて戴きましたが、瑠子シリーズはスリルがあっていつまでも読みたくなります。
↑kamaです。ありがとうございます。どこかホロリとくるシーンがあるのって、いいですよね。怪談は怖い話ばかりじゃないと思いますし。
奇々怪々に「怖いボタン」以外も欲しいです~。
また楽しみにしていてくださいね。
ボクはより子ちゃんが泥だらけになっても涼君を追いかけるとこでホロリと来ました。
より子ちゃん単独の話だけ見ていると、子供の誕生日になぜ教会から出られないより子ちゃんが家まで来たのかわからなかったけど、これでつながりました。
↑kamaです。ありがとうございます。朽屋瑠子シリーズは、ボクの作品の裏で起きてる解決編みたいな構成で、オムニバス的に楽しめるようにしてます。これからもよろしくお願いします。
今まで投稿話の中で27ページという最長の話を投稿されたkama先生お疲れ様です。ところで今回の話も場合によっては改稿などで短くなるでしょうか?
↑kamaです。ありがとうございます。改稿の可能性は無いとは言えませんが、今のところは「やり切った感」が強いので、あったとしてもたぶん1年後とか、あるいは改稿しないか・・・という感じです。そうですね・・・やるとしたら戦争の歴史を説明している部分をもう少しはしょるとか・・・ですかね。でもあの部分もより子ちゃん親子がいかにして生涯を閉じたかの部分なのでバックボーンとしては残しておきたい気もしますし。まぁとりあえず今は次の作品を出すことの方を優先したいと思ってます。ありがとうございます。
色々な方の長編作品を読んでいた際にkana様のクッチャルコシリーズを見つけ、初投稿から読ませていただいているのですがこの話で先に読んでいた作品と繋がってとてもテンション上がりました…!!
本当に楽しく読ませていただいてます!!ファンです!!!