H歯科医院
投稿者:ねこじろう (147)
「は?」
あまりの急展開の診断に、佐伯は思わず驚きの声を漏らす。
「いや、他にいろいろ調べないんですか?レントゲンとか」
医師は相変わらず憮然とした態度のまま、
「調べる?
今さっき調べたじゃないですか。
だからすぐ抜きましょう」
と言うと椅子の横にある台の上に並ぶいくつかの鋭利な器具から、一つを手に取った。
それを見た途端、佐伯の背筋は凍りつく。
医師は右手にヤットコのような器具を握っていた。
「はい、大きく口を開いて」
「ちょ、ちょ、ちょ、ちょ、待って下さい!」
そう言って佐伯は必死の表情で医師の顔を見る。
医師はそんな彼の様子に全く動じることなく、
「さあ、早く!
痛むんでしょ?」
と言って顔を近づけてくる。
佐伯はそれを避けるように反対方向を向き、
「あの麻酔とか、そんなのはしないんですか?」
と必死に訴えると医師は、
「麻酔?
うちでは、そんなことはしません。」
ときっぱり言い「さあ」と再び顔を近づけてくる。
佐伯は相変わらず口をしっかり閉じたまま、首を横に振っていた。
そんな彼の狼狽えぶりに医師は「しょうがないな」と呆れた様子で呟いた後、「お~い!」とどこかに向かって声をだす。
しばらくすると先ほどの看護師が診察室に入ってきて、医師の傍らに立った。
受付に座っている時は分からなかったが、看護師はかなりガタイが良く、背丈は天井に届くか?というくらいだ。
医師は看護師に何かひそひそと耳打ちした。
すると彼女は大きくうなずき、椅子にあらかじめ設置されている革のベルトで、素早く佐伯の腕を固定し始めた。
「おい、ちょっと、あんた、何を」
kamaです。とても楽しく拝見させていただきました。
文章うまいですね。小説読んでるみたいでした。
ラストのオチは別の落ち方もつけられそうですが、おもしろかったです。
なんならこの家族シリーズをまた読みたいです。
ヤバ医者ですね。気をつけましょう。
怖いですね。残留思念のようなものでしょうか?