二度救われた命
投稿者:ぴ (414)
その火の玉は急に私の周りをぐるぐると周り、まるで私の様子を伺っているように見えました。
私は死に物狂いで助けを求めたのですが、急に足首の木の根がぎゅうぎゅうと絞まり始めました。
足がちぎれるかと思うくらいに絞まったかと思うと、私が痛みに騒ぎ立てます。
それを察したように火の玉が急に勢いよく燃えました。
火の玉が近くで燃えると巻き付いた木の根が急に力を無くして、緩くなりました。
助かったことに気づいて、私は泣きべそをかきながら火の玉のほうを見たのです。
これで逃げられると私は安堵したのですが、それは間違いでした。
逃げようとしたら木の根に吸い取られたのか手足に力が入らないことに気づいた私は絶望しそうになりました。
「早く」と急かすように、火の玉はひょこりひょこりと動いていました。
だけどどんなに逃げたくても、足に力が入りません。
しばらくその場を動けずにいると、火の玉が急にぼとっと私の足元に何かを落としてきたのです。
それは狐のお面の人が食べていた子供の顔が浮かんだ実でした。
火の玉は実のまわりをくるくる回って、まるで食べるように言っているように見えました。
顔が浮かんだ木の実なんて食べたいなんて絶対に思わないけど、それを食べないといけないと本能的に分かりました。
生きるために死に物狂いでその実を食べました。
狐のお面の人に食べられたときのような苦しそうな声が聞こえてこなかったことが何よりも救いでした。
食べてしばらくしたら、力を振り絞ると立ち上がることができました。
なんとか立ち上がると、顔が浮かんだ木の実が暗い顔でこっちを見ました。
その顔はまるで自分一人で逃げるのかと私を責めるようなものでした。
ちょっとだけ罪悪感にのまれそうになったけど、火の玉が苛烈に光って私を待っているのが見えました。
私は恨みがましい実の視線を振り切るようにして、大きな木から走って逃げたのです。
まるで道案内するかのように、火の玉が私の前を先導してくれました。
私が途中で疲れて立ち止まりそうになると、「急げ」というように私の周りをふよふよと浮かんで急かしてきました。
しばらく走っていると、行きに聞いた楽しそうなお祭りの太鼓の音が聞こえてきました。
それと一緒にふわっとしたたこ焼きのいい香りが漂ってきて、私はそれに釣られそうになりました。
おいしそうな匂いに誘われそうになったのです。
けれどそのときも、火の玉がごうごう燃えて先を急がせてくれました。
今思ったらあのお祭りの音に誘われていたら、もう逃げきれなかったかもしれません。
森を行くと、祖母の家の屋根が見えてきたのです。
けれどもう少しの家に着くというところで、火の玉が急にぴたっと止まりました。
真っ赤に燃え上がると災いが起きるのではなく、
災いがすでに起きていてその怪異から守ろうとして燃え上がってるのかな
お祭りの誘惑に負けたりして助からなかったケースが凶事として言い伝えられてるのかもね