二度救われた命
投稿者:ぴ (414)
だって実ひとつひとつに子供の顔のようなものが浮かんで見えたのです。
その顔は一つの例外もなく、すごく辛そうで、苦しそうで、今にも助けを求めそうな表情でした。
私はそれを見てぞっとします。
そしたら、狐のお面の人が一番大きそうな実をつかんで、もぎ取ったのです。
手足でも引きちぎられたような悲痛な叫びがしました。
それを私の顔を見ながら、ひゅっと口に入れました。
実に浮かんだ子供は絶望の顔をしており、口の中から断末魔のような酷い叫び声がしました。
そこからは永遠とくっちゃくっちゃという生々しい咀嚼音がし、吐きそうになりました。
とにかく怖くて、私は必死でそっちに行くのを拒みました。
何が起こっているのかさっぱり分からないけど、その木に近づいたらまずいということだけは分かりました。
だけど、狐のお面の人に力では敵わず、私はそのお面の人に木の元に突き飛ばされたのです。
はっとして起き上がろうとしたら、なぜか立ち上がれなくなっていました。
「ひぃ」って悲鳴が出たと思います。
だって私の足にべとっとした湿り気のある何かが巻き付いていたからです。
見ると木の根っこみたいなものが巻き付いていました。
狐のお面の女性は私とそれを交互に見ると、とても残忍な形相で笑っていました。
そして私が動けないのを見届け、満足した表情でまた森の中に消えていきました。
狐のお面の人が見えなくなり、私は必死になって巻き付いた足首のものを取ろうとしたのです。
でもそれが取れなくて、ぎゅうぎゅうに足首を締め付けて離れません。
暴れれば暴れるほど、その木の根は締まるのです。
あまりの激痛に足首がちぎれそうだと思いました。
最初は必死になって暴れていたのですが、だんだん体に力が入らなくなります。
木の根から吸い取られて、体の力が抜けていくような感覚がありました。
私は上に成っている実を見上げ、ぞっとしました。
どの実に浮かんだ子供の顔も苦しそうで、私はこの木の根に魂を吸い取られて、自分があの実になる未来を想像してしまったのです。
そうすると、がくがく身が震え、抗う気が上がりました。
ただ必死になって抗いながらも、もう二度と父にも母にも兄にも祖母にも会えないかもしれないんだと思うと、あまりの恐怖に涙が堪えられなくなりました。
一人瀕死の形相で、めそめそ泣いていたときだったでしょうか。
急に周りが明るくなって、目線を上げるとそこにあの火の玉がいたのです。
その火の玉は真っ赤に燃え上がり、車の窓から見たものとそっくりでした。
真っ赤に燃え上がると災いが起きるのではなく、
災いがすでに起きていてその怪異から守ろうとして燃え上がってるのかな
お祭りの誘惑に負けたりして助からなかったケースが凶事として言い伝えられてるのかもね