そして、攻撃された子は怪訝な顔で辺りを見回し、首を傾げるのでした。
守護霊みたいなものなのか、それにしては霊感センサーも働かないし……そもそも霊ではない?
相変わらず不安げな様子の山本さんを見ながら、妹は疑問を深めていったのです。
そのうち、妹のグループ内でも、
「山本さんってなんか変じゃない?」
という声が出始めました。
周囲は感受性の強い年頃の女の子ばかりです。
霊感がなくとも、目に見えない存在に、無意識ながら反応しているようです。
彼女が弾き出されるのも時間の問題でしょう。
このままにしておくわけにはいかないな、と、妹は決断したのです。
まず妹の方から進んで、山本さんに声をかけるようにしました。
口数の少ない彼女に、返事や会話を無理強いしないように、
あくまで彼女が聞き役になれるように、穏やかな会話運びを心がけました。
ちょっとせっかちな友人が彼女と絡む時は、間に入ってワンクッション置くように、
尚且つ、あくまでも自然にコミュニケーションを取れるように努めました。
山本さんが萎縮することのないように、グループ内に溶け込めるよう心配りしたのです。
そうしているうちに山本さんも、徐々に打ち解けてきて、自発的に話すようになりました。
おとなしめな性格は変わらずでしたが、冗談を言い合ったりして笑えるくらいになったのです。
そうやって山本さんが明るくなり、妹たちと馴染んでくるにつれて、
彼女がまとっていた人影も、だんだんと薄くなり、見えなくなっていったそうです。
「で、結局その人影ってなんだったんだ?」
当時地方の大学に通っていた私は、春休みに家に帰っていたとき、
妹にその話を聞かされたあとに、こう尋ねました。
「なんだったんだろうねぇ……?」
首を傾げた妹は、これは私の憶測だけどね、と、前置きしてから、話した内容はこうです。
山本さんが妹だけに話してくれたことがありました。
彼女は小学生の時に苛めを受けていて、頭の中で想像の親友を作り出したそうです。
それは『美緒』といって、彼女と双子の設定で、自分とは違って、
活発で気が強くて、彼女が苛められている時は守ってくれる女の子でした。
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