いつも影のように彼女と行動を共にし、部屋で二人きりでいろいろ話したり、夜は一緒に寝て、と、本当に存在していたといいます。
中学は私立を受けて、小学生のときの同級生がいない環境になったので、苛められることもなくなりました。
すると『美緒』も、段々とその存在を薄れさせていき、いつしか消えていきました。
「私に見えていたのは、霊とかじゃなく、山本里緒ちゃんが作り出した『美緒』だったんじゃないかなって思うんだよね」
山本さんの想像した親友が具現化して『霊感体質』の妹に見えていたのではないか、と。
今回、父親の仕事の都合で転校することになり、不安で仕方がなかったそうです。
事実、なかなかクラスに溶け込めなくて、また苛められるんじゃないかという不安が、
ふたたび『美緒』を出現させ、彼女に害をなしそうなクラスメイトを遠ざけていたのではないか?
「人の思念が見える、なんてことがあるのかね」
「さあね……でも、少なくともそのときの私には、何かが見えてたんよ」
思春期の感受性の強い年頃は、なにかと敏感になります。
私も高校時代、強力な霊感体質の先輩の影響で、感覚が研ぎ澄まされた覚えがあります。
それを考えれば、なにがあってもおかしくはないかと思います。
後々になって、妹は、
「もし、妹ちゃんがいてくれなかったら、あんなに楽しい高校生活は送れなかったと思う、
優しく根気よく接してくれて、すごく嬉しかった、本当に感謝しているよ」
と、山本さんに言われたそうです。
妹と山本さんの友人関係は、いまも続いています。
今後も『美緒』の出番がないことを願っています。
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